研究課題/領域番号 |
17K14544
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松本 一彦 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (30574016)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | フッ素化 / 炭素 / 電極 / エネルギー貯蔵 |
研究実績の概要 |
これまでに、炭素材料をフッ素化することで、高い機能性を発現させられることが知られている。しかし、電気化学的な応用に着目したSF4による炭素材料のフッ素化に関する研究例はない。本研究の目的は、含酸素官能基を選択的にフッ素化できる四フッ化硫黄(SF4)を用いて、炭素材料をフッ素化することにより、高機能性を有する炭素材料を合成し、その構造と電気化学的特性を調べることである。反応の種類としては、炭素材料全体をフッ素化するフッ化黒鉛の合成と、炭素材料の表面修飾を目的とした表面フッ素化に大別される。 本年度は、酸化黒鉛とSF4の反応について、反応圧力と反応温度をパラメータとすることで、反応の進行度合いを調べた。分析にはX線回折法、X線光電子分光法、蛍光X線分光法、赤外分光法を用いた。その結果、反応圧力や反応温度を上げることで、フッ素化がより進行することが明らかとなった。一方で、SF4は酸の存在下で反応性が高くなるという報告があるため、フッ化水素を触媒とした反応性の向上に取り組んだところ、フッ化水素の存在下ではSF4の含酸素官能基への反応性が著しく向上し、室温でもフッ素化反応が進行することが確認された。この場合、SF4単体で反応させた場合と比較して、副生成物である層間化合物の生成がほとんどなく、ターゲットとする反応がより選択的に進行していると考えられる。 フッ素化試薬について、SF4だけでなく、一連のアニオン誘導体を開発し、その構造的特徴や熱的安定性を調べた。含酸素官能基との反応性については限られたものであったものの、SF4をベースとした安定な新しい塩の合成とその構造的キャラクタリゼーションに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化黒鉛とSF4の反応性について多くの反応条件を網羅して、ターゲットとする反応を選択的に進行する条件を見つけることに成功している。また、フッ素化剤についても、アルカリ金属塩について、系統的にアニオン誘導体を合成することに成功しており、全体としての研究の進展は当初の予想通りかそれ以上といえる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2019年度は、最適化された反応条件のもと、酸化黒鉛と活性炭のフッ素化を行い、得られた材料の電気化学的挙動を調べ、電気化学的な応用に向けた指針を得る。また、これまでにフッ素化を試していない炭素材料についても、最適なフッ素化条件を検討することで、炭素材料とSF4の反応性について系統的に成果をまとめていく。
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