研究課題
本研究の目的は、イオン伝導ガラスにおけるソレー効果を利用した熱電変換の実証である。本年度は50Li2O-50P2O5(mol%)ガラス組成を固定し、熱起電力の温度依存性(266℃~318℃の温度範囲)を窒素雰囲気下で測定し、この温度域で当該ガラスの高温側が正に帯電することがわかった。温度vs熱起電力のグラフの直線フィッティングの傾きから求めた輸送熱は-55.6 kJ/molであった。先行研究の電気伝導率の温度依存性から求めたイオン伝導の活性化エネルギーは、69.0 kJ/molであり、これら二つの数値データからイオン伝導ガラスの拡散の機構に関わるパラメータを計算すると、イオンが初期のサイトから抜け出す際に必要なエネルギーHoは、6.88 kJ/molであり、イオンが移動先のサイトに入り込むのに必要なエネルギーHfは62.3 kJ/molであった。HO<HfであることからLiイオンの輸送機構はvacancy transportではなくindirect interstitial transportであると考えられる。また、Ho<HfであることがLiイオンが高温側へ移動する理由であることがWirtzらのモデルから示された。本研究で得られた最大の熱起電力は、266℃での測定における154 µV/Kである。以上をまとめると、本研究ではガラス転移温度以下の温度勾配下で50Li2O-50P2O5(mol%)の高温側が正に帯電することを示し、それはLiの拡散形態が原因で、Liが高温側で高濃度となることが原因であることを理論的解析により示した。これらは、ガラスが温度勾配に晒されたときにおこる現象を理解もしくは予測する上で有用な知見と考える。
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Journal of the Ceramic Society of Japan
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Scientific Reports
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