研究課題/領域番号 |
17K14548
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
金 正煥 東京工業大学, 元素戦略研究センター, 助教 (90780586)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アモルファス酸化物半導体 / TFT / 光劣化 |
研究実績の概要 |
本研究は、超ワイドバンドギャップアモルファス酸化物半導体(UWB-AOS)を開発し、従来のAOSの持つ光劣化を解決、遮光膜の要らない透明デバイスを目指すものである。透明半導体は名称通り、透明であることが大きな特長であるが、現在では、ギャップ内の欠陥準位による光劣化が生じるため、実用デバイスでは遮光膜が必須になっている。そのため、従来のAOSにおいて、光劣化は製造コストや透明電子デバイスといった観点から重要課題であった。 初年度計画としては新規UWB-AOSを探索し、基礎物性の評価、キャリア生成機構および欠陥制御の指針を得ることを目的とした。初年度の研究成果としては、構成元素を調整することによって高移動度ながらも超ワイドバンドギャップのAOSが得られることを明らかにし、実際の素子を作製、評価を行った。その結果、従来のIGZO TFTは約10cm2/Vs程度の移動度を持ち、深刻な光不安定性を示したが、新たに開発されたUWB-AOS TFTは20cm2/Vsの高い移動度を持ちながらも非常に強い光安定性を示した。このような成果が得られた大きな理由としては、高移動を保ちながらバンドギャップを広げる指針が得られたためである。従来のAOSはn型半導体であるため、価電子帯より伝導帯の電子構造が最も重要である。その故、伝導帯準位を調整し、バンドギャップを広げるような方法では、移動度が小さくなるといった問題点が生じてしまう。一方、本研究では、構成元素を適切に選ぶことによって価電子帯の準位だけを調整し、高移動度の超ワイドバンドギャップAOSを実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の研究計画は、新規UWB-AOSの探索および物性評価であり、研究当初、構成元素の異なる従来のAOSの電子構造を調べた。その結果、構成元素によっては価電子帯の準位が浅くなり、それによってバンドギャップが小さくなる傾向を示すことがわかった。また、構成元素によっては価電子帯の準位が深くなり、バンドギャップが大きくなることも明らかにした。AOSはn型半導体であるため、価電子帯よりは伝導帯の電子構造が最も重要である。その故、伝導帯準位を調整し、バンドギャップを広げるような方法では、移動度が小さくなるといった問題点があった。一方、本研究では、従来のAOSの電子構造を調べることにより、構成元素を適切に選らぶことによって価電子帯の準位だけを調整し、高移動度の超ワイドバンドギャップAOSが実現されるといった指針を得た。現時点ではすでに既存のAOS材料であるIGZOよりも移動度が2倍ほど高く、非常に高い光安定性を持つTFTが実現されているため、2年次計画の一部がすでに達成されたことになる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、新たに開発されたUWB-AOSを用いて、高い光安定性を必要とする新たなデバイスを開発する。近年、フレキシブルや透明デバイスへの要望が高まっていることから本研究でですでに実証したTFTだけではなく、高い光安定性をより活かした新たなアプリケーションを考慮、また、それに相当する新規デバイスを作製する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めるに必須な備品購入のため、当初の次年度研究費全額を前倒し支払申請を行っており、一部の金額を残した。また、この予算は次年度研究で必要な消耗品の購入に使う予定である。
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