本研究は、低温での真空プラズマエッチングによる樹脂ナノファイバの分解消失を利用し、網目状の犠牲型樹脂ナノファイバに被覆された金属薄膜の不整合ひずみエネルギーを解放させることにより、金属ナノコイル網が自発的に形成されるらせん状金属ナノ構造体の創製技術を開発し、その応用を図ることを目的とする。特に、プラズマの利用により、低温での創製・形状制御および省エネルギー化は本手法の特徴である。平成30年度は前年度の研究成果を踏まえ、以下の実績を得た。 (Ⅲ)電気特性評価 マイクロ四端子法を利用して、Agナノコイル網の電気特性を評価した。僅か数%のAgナノコイル面積率に関わらず、電流ー電圧の線形関係より、当該コイル網が金属特性を有することを確認した。また、樹脂ナノファイバのエレクトロスピニング時間を調整することによってナノコイル網の面積率を変え、シート抵抗の数十から数百Ω/□のAgナノコイル網を得た。シート抵抗が面積率に顕著に影響されることが明らかにした。 (Ⅳ)透明フィルムヒータへの応用展開 シート状にした透明な樹脂材にAgナノコイル網を付着させ、Au電極膜を被覆し、透明フィルムを試作した。ナノコイル網の面積率および積層数を変化させたフィルムの光透過率を測定し、透明性を調査した。結果、面積率数%のAgナノコイル網を3層積層したフィルムに対しても、85%以上の優れた光透過率が得られた。また、大気・室温環境で直流電圧を印加しながら、フィルムの表面温度を計測した。迅速に発熱性・回復性があることを確認した。さらに、種々の曲率半径での曲げ変形時の発熱特性を調査した結果、曲げ変形によらず表面温度がほぼ一致であることを確認した。ただし、使用したAgナノコイルのシート抵抗がやや高く、低電圧での発熱効率が下がると思われる。今後、低シート抵抗のフィルムの作製が課題として残っている。
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