本研究では、多軸ランダム振動を受ける機械、構造物を安全かつ有効に使用することを目指し、多軸ランダム振動を受ける材料の疲労損傷メカニズム解明および評価試験法の構築を目的として、アルミニウム合金A5056を用いて実験による検討を行った。 初年度は、単純な形状であるボタンヘッド型試験片に対して多軸ランダム振動を与え、疲労破壊挙動を分析した。その結果、多軸ランダム振動を受ける材料であっても、一つの振動モードが現れるため、主応力方向の負荷を修正マイナー則で考慮することで疲労寿命を評価できる可能性を示した。 第2年度から最終年度は、複雑な形状であるY字型試験片に対して多軸ランダム振動を与え、疲労破壊挙動を分析した。振動試験中には、破壊起点近傍のひずみを3軸ひずみゲージおよび1軸ひずみゲージを用いて測定した。その結果、複雑な形状であるY字型試験片においては、一つの振動モードだけではなく複数の振動モードが現れる場合があり、その場合においては主応力方向が変化することが分かった。また、主応力方向は変化するが、その変化する主応力方向の中で最大の主応力をとる方向の負荷を修正マイナー則で考慮し疲労寿命を算出すると、実際の疲労寿命よりも約10倍大きく評価することが分かった。これは、主応力方向が変化することによる非比例負荷の影響等の影響が大きいためだと考えられる。つまり、対象の材料形状が複雑になると、複数の振動モードが現れるため、一番負荷が大きい方向の応力のみを考慮した場合は実際の疲労強度よりも長寿命側に評価してしまう可能性があることが分かった。
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