本研究では,高圧水素環境下で使用が期待される3種の析出強化型合金(Fe基超合金SUH660,Ni基超合金Alloy718,銅ベリリウム合金Cu-Be 25)を対象に,大気中における両振りの疲労寿命試験を実施した.疲労破壊のメカニズムにおける析出強化の影響を明らかにするため,各供試材の溶体化処理材についても同様の疲労寿命試験を行った.Fe基超合金SUH660およびNi基超合金Alloy718については,高圧水素ガス曝露により水素を吸蔵させた疲労試験片を用いて疲労寿命試験を実施し,疲労破壊メカニズムに及ぼす水素の影響について検討した. 1.Fe基超合金SUH660:高応力域においては,析出強化により疲労強度は向上することが認められたが,応力レベルが疲労限度に近くなるほど,析出強化材と溶体化処理材の寿命差は小さくなった.水素チャージを施した析出強化材の破面には,広範囲にわたってファセットが観察され,破壊形態に及ぼす水素の影響が示唆された.しかしながら,析出強化材および溶体化処理材のいずれにおいても,高圧水素ガス曝露を施しても疲労寿命や疲労限度の低下は認められなかった. 2.Ni基超合金Alloy718:析出強化材の疲労限度は,溶体化処理材のそれよりも130MPa高くなった.溶体化処理材では,水素チャージによる疲労寿命および疲労限度の低下は認められなかった.一方,析出強化材では,水素チャージにより疲労強度および疲労限度が低下した.水素チャージを施した析出強化材の疲労破面には,広範囲にわたってファセットが観察された. 3.銅ベリリウム合金Cu-Be 25:本研究では,溶体化処理材の疲労試験を実施した.溶体化処理材の引張強度は,析出強化材と比較し,700MPa以上も低い値であるにもかかわらず,疲労限度は析出強化材と比較してほぼ同等となることが明らかになった.
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