研究課題/領域番号 |
17K14560
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
施 建 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (40735867)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 複合材料・物性 / 機械材料・材料力学 / 表面・界面物性 / 混合ガスプラズマ |
研究実績の概要 |
地球温暖化問題が深刻化する近年,運輸業界では,低燃費化によるエネルギー効率向上を図る動きがある.材料学の観点からは車体の軽量化が挙げられ,繊維強化プラスチック(FRP)が注目されている.界面接着性がFRPの性能には大きな影響を及ぼしているため,繊維に前処理を行う必要がある. 本研究では,更なる界面接着性向上を目的に,直交表を利用することでILSSが向上する最適なプラズマ処理条件を明らかにする.また,XPS,AFMや力学試験を行うことで,プラズマ処理によりILSSが向上したメカニズムの解明を行う.更に,最適条件を基に作製したFRPの曲げ試験を行うことで,FRPの力学特性がどのように変化したのか検討する. H29年度はガラス繊維と炭素繊維を対象に,プラズマ処理諸条件の最適化を図り,処理電力,処理時間,ガス流量,混合ガスの割合を因子とし,それぞれ100W,150W,200W・1min,3min,5min・50sccm,100sccm,150sccm・7:3,5:5,3:7の水準で直交表による実験計画法で実験を行い,最適条件を見出した.また,最適処理が行われた繊維を用いて,VaRTM法で繊維強化プラスチック複合材料を作製し,その力学特性を評価した.曲げ特性はプラズマ処理した場合,ガラス繊維は処理なしのものと比べて,ほぼ同程度の特性を持っているのに対して,炭素繊維はプラズマ処理した方が高い.繊維と樹脂の接着性を調べるため,破断面をSEMで観察を行った.プラズマ処理した場合,繊維と樹脂はしっかりくっ付いている.繊維の引き抜きはあまり見られない.処理なしの場合は繊維と樹脂は簡単に剥がれていて,繊維の引き抜きはたくさん見られる.炭素繊維の場合,プラズマ処理は繊維と樹脂の接着性を改善したのが分かった.ガラス繊維の場合は繊維自体の損傷が原因で,曲げ特性はほぼ同程度であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H29年度は当初の計画通り研究を順調に進めた.また,本来H30年度とH31年度遂行予定の力学特性の評価とメカニズム解明の一部分はH29年度内に遂行することができた.H30年度は処理した単繊維強度の評価とメカニズム解明の予定である.
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今後の研究の推進方策 |
H29年度の研究では,プラズマ処理で界面強度を向上できることが分かったが,その界面強度を向上した原因を突き止める必要がある.今後はプラズマ処理により繊維界面を化学的および物理的評価し,界面強度向上のメカニズムを解明し,研究を進めていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品を購入した際,当初の計画と比べて価格が下がったことにより次年度使用額が生じた. H30年度請求額と前年度未使用額をあわせて,単繊維の強度を調べる小型引張試験機を購入する予定である.
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