本研究課題では,提案する液浸式Sonic-IR法の欠陥検出性向上を実現するための新手法を開発することを最終目標とし,本研究ではその実現に向けた基礎的研究に取り組む.初年度であるH29年度では,提案する非破壊検査法における試験条件の中から,欠陥検出性に特に影響を及ぼす項目を明らかにした.H30年度では,検査法の試験条件の中の重要項目に重きをおいて検討を進め,具体的には検査対象における超音波入力領域が検査対象の振動状態や欠陥部での発熱に及ぼす影響について調べた.以下に,H30年度の研究成果を示す. (1)検査対象物に生じる振動モードの特定 有限要素法による固有振動解析,検査対象物(片側貫通き裂を有する平板試験片)に貼付けた粘弾性テープの発熱計測および振動計測の結果より,検査対象物に発生した複数の振動モードを特定した. (2)検査対象物の振動状態とき裂部の発熱の関係 き裂面同士の相対加速度とき裂部の発熱に相関関係が認められた.また,検査対象物に生じた複数の振動モードの中から,き裂部の発熱に特に影響を及ぼす振動モードを明らかにした. (3)超音波入力領域と欠陥部の発熱の関係 検査対象の超音波入力面積が増加すると,き裂部の発熱も上昇する傾向が見られた.また,欠陥部の発熱は,液中の音圧分布と検査対象物の固有振動の腹・節の位置関係によって大きく変化することが明らかになった.
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