研究課題/領域番号 |
17K14564
|
研究機関 | 鈴鹿工業高等専門学校 |
研究代表者 |
板谷 年也 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (00650425)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 非破壊検査 / 熱可塑性CFRP / 誘導加熱 / 渦電流探傷法 |
研究実績の概要 |
立体形状の熱可塑性CFRP(以下、CFRTP)として、全電動式射出成形機を用いてCFRTPシートとCFRTPペレットとのハイブリッド成形によってハット型のCFRTPを製作した。はじめに、提案するコイルによるCFRTPの有限要素解析を行い、コイル形状および印加電流を変えた場合のCFRTPに発生する渦電流分布および温度分布を明らかにした。コイル巻線直下で、渦電流密度および温度が高いことが分かった。CFRTPシートとCFRTPペレットの物性値は、キセノンフラッシュアナライザーを用いて熱拡散率を測定し熱伝導率を求めた。そして、比抵抗・ホール測定システムを用いて、抵抗値を測定し導電率を求めた。つぎに、提案する誘導加熱コイルを用いて、CFRTPの誘導加熱実験を行った。コの字および方形コイルを電磁誘導加熱装置と接続し、CFRTPの表面と裏面にK型熱電対を取り付けデータロガーで温度を測定した。有限要素解析と同様に、ハット型CFRTPの温度分布は誘導加熱コイルの巻線部分に沿って温度が上昇することが分かった。しかしながら、電磁誘導加熱装置とコイルのインピーダンスマッチングの問題があり、コの字コイルの場合、CFRTPの表面を溶融温度まで加熱することが出来なかった。一方、縦置きの方形コイルを用いた場合、CFRTPの表面において溶融温度まで加熱することに成功した。今後として、損傷を付与したCFRTP と別途用意したCFRTPパッチの誘導加熱実験と融着部の渦電流法による非破壊検査と抜き取り破壊評価を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
立体形状のCFRTP と高周波励磁コイルによる渦電流の相互作用の有限要素解析において、コイルの耐熱とインピーダンスマッチングまで考慮することが難しかった。そのため、有限要素解析でコイル形状の違いによる温度分布まで明らかにすることができたが、加熱時間が異なる結果となった。また、CFRTPの誘導加熱実験実験において、電磁誘導加熱装置とコイルのインピーダンスマッチングの問題があり、コイル形状によってはCFRTPの溶融温度まで加熱することが難しかった。加えて、立体形状のCFRTPの損傷付与法について、当初はシャルピー衝撃試験機を予定していたが、立体形状を保持する冶具の製作の問題があり、落球試験方法を検討した。以上より、当初予期していないことが起こり、CFRTPに損傷を付与した上での誘導加熱実験まで行えなかったため。
|
今後の研究の推進方策 |
誘導加熱によるハット型と呼ばれる立体形状のCFRTPの融着試験とその融着部に対して破壊評価を行う。研究の進め方として、 1.提案する落球試験方法によるハット型CFRTPの損傷付与試験:立体形状のCFRTPは、その形状からシャルピー衝撃試験機で衝撃を与えることは難しい。そのため、立体形状のCFRTPにも衝撃を与えることができる落球試験方法を提案する。3種類の衝撃試験用鋼球を立体形状のCFRTPの中央上部25cm、50cm、75cm、100cmの高さからそれぞれ落下させて衝撃エネルギーを負荷し、それによって付与された繊維損傷によるCFRTPの表面および内部の状態を、渦電流探傷試験とX線CTによって明らかにする。 2.損傷を付与したハット型CFRTPと別途用意したCFRTPパッチの誘導加熱試験:損傷を付与したハット型CFRTPと別途用意したCFRTPパッチを重ね、汎用の高周波電源に接続した誘導加熱コイルによってそれを加熱し、K型熱電対を取り付けたデータロガーで表面および裏面の温度を測定する。 3.卓上型ニュートンプレスによるハット型CFRTPの損傷修復試験:上記2の誘導加熱による溶融部分を卓上型ニュートンプレスによって融着する。その際、加圧力が小さすぎると融着できず、加圧力が大きすぎると強度が低下してしまう。そのため、融着に最適な加圧力を調査する。 4.損傷付与したハット型CFRTPの引張試験と機械的特性の評価:立体形状品をそのまま静的試験を用いて機械的特性を評価することは難しい。そこで、CFRP専用ハサミで損傷部分を抜き取り、精密万能試験機オートグラフを用いて引張試験を行う。そして、引張試験の結果から応力ひずみ線図を描くとともに、降伏点・引張強さなどの機械的特性を定量的に評価し、立体形状のCFRTPの損傷修復の性能を明らかにする。
|