研究課題/領域番号 |
17K14565
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
直江 崇 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究副主幹 (00469826)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 機械材料・材料力学 / ギガサイクル疲労 / 溶接 / 転位 / 繰返し硬化 |
研究実績の概要 |
本研究では,パルス核破砕中性子源の標的容器構造材料であるオーステナイト系ステンレス鋼に対して,高ひずみ速度の疲労試験を実施し,実構造物の寿命評価に重要となる溶接部のギガサイクルまでの疲労過程を金属組織の変化に着眼し明らかにすると共に,疲労過程で生じる微小き裂が主き裂に移行する過程を非破壊・非接触的に捕らえる手法を開発することを目的としている.研究初年度である平成29年度は,主に試験片製作と基礎データの構築を実施した.超音波疲労試験は,通常砂時計型の試験片を用いるが,本研究では,溶接ビードが疲労強度に及ぼす影響を調べるために,試験片中央部に溶接線を配置した独自形状の試験片を用いた.したがって,試験片を製作するにあたり有限要素法解析により試験片の共振周波数の最適化,及び端部変位と応力との相関を評価した. その結果,浸透探傷検査及び放射線透過試験により,検出可能な溶接欠陥がないことが確認された溶接ビードを除去した溶接材は,ギガサイクル領域においても非溶接材である受入材と比較して疲労強度が高くなること,溶接ビードが残存する試験片では,受入材と比較して疲労強度が著しく低下することを確認した.ここで,ビードのある試験片の応力はビード形状を考慮しないR型試験片から導出した応力値である.また,試験片の断面及び破面観察により,溶接ビードがある試験片では,ビード止端部の応力集中箇所を起点として疲労き裂が発生・伝ぱすることを確認した. さらに,次年度以降に実施する疲労過程での材料組織変化を調査するための準備として,負荷応力を疲労限度以下に設定し,応力の負荷回数を変化させた試験片を製作した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ギガサイクル領域の疲労強度に及ぼす溶接及び溶接ビードの影響を評価するために,超音波疲労試験法で通常用いられている砂時計型試験片とは形状の異なるR型試験片を有限要素法による共振周波数最適化などを実施して設計・製作した.製作した試験片を用いて,ギガサイクルまでの疲労強度に及ぼす溶接の影響を評価するための疲労データの構築を実施している,次年度は,疲労過程における金属組織の変化を転位密度の観点から評価するための測定を計画している.また,疲労き裂の検出については,これまでよりも高解像度のサーモグラフィを整備し,疲労試験中の試験片表面の温度分布の測定に着手したところである.
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今後の研究の推進方策 |
疲労過程における金属組織の変化について,中性子を用いた転位密度の測定を実施することを計画しているが,中性子による測定は,マシンタイムが確約されているわけではないため,予定通り実施できるとは限らない.したがって,非線形超音波装置を用いた減衰係数の測定を実施し,中性子測定以外の方法による評価もあわせて実施していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 溶接試験片の設計や,溶接残留応力による切断時の変形のために,試験片製作に製作に時間を要したため,非線形超音波装置を用いた測定の着手が遅れ,十分なプローブの選定ができなかった.また,参加予定であった国際会議を取りやめ,国内で開催される国際会議に参加したこと及び旅程が変更になったことで旅費に差額が生じた. (使用計画) 次年度に製作が難航した疲労試験の追加製作,非線形超音波プローブの購入を予定している.また,き裂検出のための機器の整備を検討している.
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