研究課題/領域番号 |
17K14566
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
名越 貴志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (40769668)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 微小疲労試験 / 繰返し応力 |
研究実績の概要 |
当該年度は,昨年度改修した試験機を用いて微小疲労試験を行う予定であった.荷重や変位の精度向上のため,アースの見直しやなどを行った結果,1MPa程度の局所応力降下も十分識別できる高い精度を実現した試験機にて,チタン合金のTi6Al4V合金を用いて両振り応力の引張試験を実施した. 試験実施にあたり試験片の最適な形状を検討するため,有限要素解析を行った.試験片のゲージ長を一定の範囲で変化させてもゲージ部の応力分布が均一になることを確認できた.また,マイクログリッパーを模擬したチャック部により強制変位を与える解析からも,同様にゲージ部で均一な応力分布となることがわかった. 3種類の異なる熱処理を行ったTi-6Al-4Vから微小試験片を作製し,圧縮と引張の試験を交互に繰り返すことで両振り応力条件での微小疲労試験をおこなった.水冷材では等軸α相の平均粒径が小さい水冷材の方が降伏強度が大きく,結晶粒径の大きさと降伏強度の相関が得られた.また,等軸α相の結晶粒径の大きさでラメラ相内でのすべり発生が左右されることから,針状組織のラメラ相が強度に対して支配的な影響を及ぼしていると示唆する結果を得た.また,繰り返し負荷においてはすべり帯の再利用が確認でき,その進行の結果としてイクストルージョン,イントルージョンなどの発達が観測されており,疲労進展の素過程についての重要な知見を得た. これらの結果は国内学会,国際学会に合わせて3件報告しており,国内外への成果発信にも努めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チタン材料の微小疲労試験について実験を進め,多くの結果を得ており,これらは疲労進展の素過程について重要な知見を与えるものだと考えられる.また,これら結果について学会発表などによって成果普及に努めたことも踏まえ,研究は順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において,チタン材料の繰返し応力試験において,すべり帯の再利用や,イクストルージョン,イントルージョンなどの現象が確認できた.今後はこれらの結果を精査するため,透過像による転移組織の確認や,EBSDを用いた方位解析を用いることによって,疲労による内部組織の変化を評価していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
試験機の性能が測定に十分な水準に達しており,試験機の改修を行うと試験の行えない期間ができてしまうことを避けるため,試験機改修に必要な予算を計上しなかったことから,次年度使用額が生じた.翌年度分助成金と合わせることで,新しい微小試験機を新たに作成することも視野に入れ,試験機の精度を高めていくことでより良い成果が得られるように予算を使用していく予定である.
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