研究課題/領域番号 |
17K14570
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
古木 辰也 岐阜大学, 工学部, 助教 (00783482)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | CFRP / エンドミル / 研削加工 / トリミング / オシレーション / 表面粗さ / バリ |
研究実績の概要 |
昨年度の研究により,開発するcBN電着エンドミルの台金形状や使用砥粒径の最適値を決定したことで,工具外周側に配置した砥粒の脱粒は生じなくなった.しかしながら,種々仕上げ研削加工条件が加工中のCFRP温度や加工品質に与える影響度合いは未知のままであった.加工中のCFRP温度はバリや未切断繊維,層間剥離を引き起こす.またCFRP加工において加工面エッジ部のバリ発生が問題となる.従来の切削工具と異なる使用方法である本工具を使用し,上記の問題が発現した場合,どの加工条件を変更すれば良いかが分からなければ,本工具を有効に使用することができない.そこで本年度は工具周速や一刃あたりの送り量,切込み量といった仕上げ研削加工条件が,CFRP温度や研削抵抗,バリ,表面粗さに与える影響をSN比により評価した.CFRP温度については一刃あたりの送り量と切込み量の影響が大きく,これは研削抵抗と大きな相関があった.エッジ部のバリは切込み量に依存していることがわかった.表面粗さは研削条件による影響はほぼ確認できなかった.そこで砥粒径が異なる工具を作製し,検証した結果,砥粒径が小さい方が表面粗さは小さくなった.さらにバリも砥粒径が小さくなるほど発生が抑制された.一方で,CFRP板厚方向(工具軸方向)の表面粗さが航空機部品のCFRPの要求値を達成できなかった.そこで工具を揺動させるオシレーション加工を行ったところ,表面粗さは1μmRa以下の高品質な加工表面を得ることができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度計画のとおり,開発工具を用いたCFRPのトリミング研削加工において,研削加工条件がCFRP温度や加工精度といった加工品質に与える観点について調査した.それら加工品質を目的変数とし,加工条件を説明変数としてタグチメソッドを用いて,各加工条件が加工品質に与える影響度を評価した.その結果,CFRP温度は一刃あたりの送り量と切込み量を変更することで50℃~200℃の広い範囲で調整することが可能であることがわかった.CFRP加工面エッジ部のバリは,従来のダイヤモンドコーティングエンドミルが約70μmであったのに比べて,開発工具では約40μmとさらなる高精度加工が可能であった.表面粗さは航空機製品で求められる3.2μmRaを下回ることができなかった.そこで工具を軸方向に揺動させて加工するオシレーション加工の適用を試みた.いくつかの振幅値で加工実験を検証した結果,振幅値を砥粒径以上とすることで表面粗さは1μmRa以下と,ダイヤモンドコーティングエンドミルでの表面粗さを下回る高品質な加工表面を得られた.またバリについても約20μmとさらに発生を抑制することができた.この結果について論文として公表するため国際誌へ投稿中である.
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により,開発工具の最適台金形状および砥粒径,加工条件を決定し,開発工具の有効性についても証明された.これまでは航空機分野で使用される熱硬化性CFRPを用いて実験を遂行してきた.このようなCFRPは高いガラス転移温度を持っており,CFRP加工において熱反応性が低い材料に位置づけられると思われる.一方で近年自動車分野への適用材料として注目を集めている熱可塑性CFRP(CFRTP)のガラス転移温度は100℃前後と低く,熱反応性が高い材料と思われる.したがって,今年度はこれまでに開発した本工具と導出した加工条件がCFRTP加工に対応可能かを調査するとともに,CFRTPの加工特性および最適加工条件を導出する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究テーマは当初計画を基に順調に遂行している.今後の研究計画に記述した熱可塑性CFRP(CFRTP)の研削加工実験は昨年度末から実施する計画であった.これまでの実験で使用してきたCFRP試験片は本学設備で製造してきたが,CFRTPは外部企業から購入する必要がある.しかしながら,当該企業からの昨年度内の納入が不可能であるとのことであったため,次年度使用額が生じた.
|