炭素繊維プラスチック(CFRP)を高精密・高能率に粗加工と仕上げ加工を行うことが可能な新工具であるcBN電着エンドミルを開発するために,切れ刃形状が異なる当該工具を試作し,当該工具でCFRPの外周加工を行った際の切削/研削抵抗,加工中CFRP温度,加工振動,加工面粗さ,バリや未切断繊維の発生量などの種々加工特性を包括的に考慮することで,当該工具によるCFRPの除去機構の解明と,最適な切れ刃形状,砥粒径,加工条件を解明した. 初年度は,切れ刃形状の影響を調査し,工具表面に電着固定されたcBN砥粒が切削工程と研削工程ともに脱粒せず,かつバリや未切断繊維,加工面粗さが小さくできる切れ刃逃げ角を解明した.先行研究ですくい角やねじれ角等のその他切れ刃形状パラメータは解明済みであるため,これにより最適切れ刃形状を明らかとした. 2年目では,砥粒が脱粒せず,加工断面品質が良好となる最適な砥粒径を解明した.これにより最適な工具形状仕様を決定できた.また,CFRPマトリクス樹脂のガラス転移温度を基準としてCFRPの熱的ダメージを抑制できるとともに,加工断面品質が航空機部品の要求を満たすことができる切削/研削条件の解明を行った.その明らかとした条件は,従来のダイヤモンドコーティングエンドミルと同等の加工能率を維持しながら,研削砥石で加工したようにバリや未切断繊維の発生を抑制できることがわかった.ただし,表面粗さのみが従来工具の場合と比べて小さくならないことが判明した. 最終年度は,加工面粗さ改善のため,工具を揺動させて加工するオシレーション研削を適用し,その粗さ生成機構の解明と粗さ予測モデルを構築した.その予測精度はサブμmオーダと高く,加工後粗さは航空機部品の要求を十分に満たすことがわかった.また熱可塑性CFRPの加工試験を行い,加工条件を低下することなく良好な加工が可能であることもわかった.
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