研究実績の概要 |
光ナノインプリントは最先端リソグラフィへの応用が検討されており、更なるプロセスの高速化や低欠陥化が求められている。HFC系凝縮性ガスを導入するナノインプリント手法は、バブル欠陥の完全除去以外にも樹脂の高速充填やモールドの低離型力といった大きな利点がある一方で、ガスをナノインプリント用の樹脂が吸収してしまうのに起因したパターンの品質の低下が課題とされていた。そこで本研究では、これまでと飽和蒸気圧の異なるハイドロフルオロオレフィン(HFO)系の凝縮性ガスを導入する手法の検討を行い、ガスの吸収量の調査とパターン品質の評価を行う。今年度は真空グローブボックスを用いて、HFC系凝縮性ガス[1,1,1,3,3,-ペンタフルオロプロパン(PFP) 飽和蒸気圧0.15MPa]とHFO系凝縮性ガス[トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(TFP)飽和蒸気圧0.5MPa]の雰囲気下において、25種類の溶剤の溶解量を測定し、ガスの吸収量の傾向の調査を行った。小型容器に3mgの各溶剤を封入し、グローブボックス内をガス雰囲気に置換した後に、10分間ガスに暴露し、その時の吸収量の変化を、電子天秤を使用して質量分析した。PFP、TFPのどちらのガスも14種類への溶剤の吸収を確認し、その中でもAceton, Dimethyl formamide, Tetrahydrofuranの3種類の溶剤に対しての吸収量が多いことがわかった。溶解する溶剤の種類はPFPとTFPで同じ傾向を示していたが、PFPガスの溶解量はTFPガスに比べて約5倍多かった。このことは、PFPガスとTFPガスの飽和蒸気圧の違いが溶解量の違いに起因していると考えられ、TFPガスを用いた場合にはどのような樹脂を用いた場合にもPFPに比べて高品質なパターンが得られることができると推察される。
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