本研究の目的は、生産性が高く大面積パターニングが可能な印刷技術において、印刷線幅100ナノメートルを実現することである。ナノインプリント技術で樹脂フィルム基板に形成した表面微細構造を利用したナノ印刷技術の開発を行い、本年度は以下の成果が得られた。 (1)幅広い粘度のインクで80ナノメートル線幅の印刷パターンを実現 開発したナノ印刷技術は、表面微細構造とインクのぬれ性が印刷結果に大きな影響を与える。基板表面のぬれ制御により、約10ミリパスカル秒の粘度のインクおよび100ミリパスカル秒のインクを用いて80ナノメートル線幅のパターン形成に成功した。幅広い粘度のインクに対応できるプロセスを開発することは、インクを構成するパラメータ(溶媒、ナノ粒子含有率、ナノ粒子の種類、粒径など)の変化に対応でき、インクパターンを利用した光学素子開発において重要である。 (2)ナノ粒子インク構造による光学素子開発 開発したナノ印刷技術を用いて、可視光域、近赤外域で機能するインクメタマテリアルを作製した。昨年度は、銀ナノ粒子インクパターンの焼成体でメタマテリアル特性の実証に成功したが、本年度は、焼成前のインクパターンにより発現する新奇な光学特性を見出し、その特性評価を行った。厚さ150ナノメートルのナノディスク形状の銀ナノ粒子インクパターンにより、波長430ナノメートル付近で99.5%の吸収率が得られた。これは成膜された銀ナノディスクにより発現する光学特性とは異なる特性である。これにより、金属ナノ粒子インクを用いることで、成膜されたメタマテリアルでは得難いような特長を持つ光学素子の実現可能性が示された。
|