研究課題/領域番号 |
17K14579
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
佐藤 善紀 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20739362)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | トライボロジー / 電気化学 / フレッティング |
研究実績の概要 |
近年,高圧ポンプの耐久性向上及び高精度化の需要が高まり,それに伴い逆止弁に用いられるバルブシート及びバルブボールの異常摩耗が指摘されてきた.特に腐食環境下においては「新生面の露出」と「その腐食」の相乗作用(動的腐食)により激しい摩耗が生じると考えられる.本研究ではこれらの部品間にインパクトフレッティング摩耗が生じているものと捉え,実験的研究を行った. 実験装置には電気化学的測定を可能とするポテンショスタットが導入され,試験中の表面電位の測定及び制御が可能となっている. インパクトのみ(I試験),フレッティングのみ(F試験),インパクトフレッティング(IF試験)それぞれで摩耗試験を行ったところ,I試験及びF試験における摩耗深さは非常に小さく(0.3um未満),一方でIF試験ではI試験及びF試験の30倍程度の摩耗深さを示した.これは接触非接触と摩擦が繰り返されることによる「腐食摩耗の相乗作用」が非常に支配的であったことを示唆している.また,これらの相乗作用は腐食生成物の除去効率に依存すると申請者は考え,インパクトフレッティングにおける衝突角度を制御した実験を行った.得られた結果として,接触圧力で標準化した摩耗深さは衝突角度が小さくなるほど増大する傾向にあることがわかった.つまり接触と非接触が繰り返される環境では,純粋なインパクトに近づけるほど摩耗が低減されることを意味している.しかしながら実験装置の特性上,衝突角度とともにスクイーズ作用が増大するため,これらの影響についてはより詳細に検討しなければならない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,インパクト摩耗,フレッティング摩耗,インパクトフレッティング摩耗(IF摩耗)の比較検討を行い,IF摩耗において相乗作用が特異的に大きくなることが明らかとなった.またIF摩耗における衝突角度の影響について,衝突角度の増大とともに摩耗が増大する傾向が得られた.これは高圧ポンプのバルブシートの形状選定の指針など,工学的意義のある結果が得られたと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
これまで代表的な耐食性材料であるSUS304鋼を用い実験を行ってきた.今後の方策として,他の有用な耐食性材料のインパクトフレッティング摩耗特性について調査,検討を予定している.例としてニッケル基合金(Alloy690)やCoCr合金などが挙げられ,特にAlloy690は熱処理を施すことにより耐食性,機械的強度が大幅に増加するとの報告がある.これらについて,インパクトフレッティング摩耗試験及び電気化学的な分極試験から動的腐食特性を明らかにする. また腐食摩耗モデルの構築のため,表面電位の制御下において摩耗試験を行い,機械的作用と化学的作用の切り分け及び化学的摩耗のモデリングを行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の実験装置における動力源となるピエゾアクチュエータの寿命を約3年と想定し,初年度に余裕を持った申請をしていたが,実験に支障が出る故障等は今年度には生じなかった.また,今年度発注した試験片材料の納期が延長され,次年度に納品されることとなった.これらにより次年度使用額が生じている. 試験片材料は次年度4~5月に納品予定である.またピエゾアクチュエータについては劣化による変位の減少が確認されており,次年度に購入予定である.
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