船舶の摩擦抵抗低減技術として空気潤滑法が開発されたが,抵抗低減効率が低く,今だ広く普及されていない.その中で,模型船実験により,乱流境界層にボイド波が存在する際に抵抗低減が生じることがわかった.またチャネル実験により,気泡注入時に脈動を与え人工的にボイド波を作ることで,抵抗低減効果が向上することも確認された.人工ボイド波を用いて空気潤滑法の効率と安定性を改善できると期待される.しかし,いずれの実験も低速・短距離での実験であり,実用条件のような高速・長距離におけるボイド波の抵抗低減効果は不明である.さらに,高速流れでボイド波が有効だとしても,ボイド波の最適化に関する検知がない. 本研究のH29年度では,自然に発達するボイド波の周波数に合わせて生成した人工ボイド波が長距離において維持できることがわかった.H30年度には,(1)高速流れの抵抗低減におけるボイド波の有効性の確認と(2)長距離におけるボイド波の成長過程を調べた. 【1.高速流れの抵抗低減におけるボイド波の有効性】 海上技術安全研究所が所有する高速チャネルを用いて,空気潤滑法により抵抗低減効果が生じる際に,船舶の巡航速度と同様な5-10m/sの高速流れでもボイド波が生じるか,また人工ボイド波で抵抗低減効果が向上するかを調べた.実験結果,高速流れでも抵抗低減時にボイド波が確認された.また,既存の空気潤滑法では8m/s以上の流れで得られなかった抵抗低減効果を,人工ボイド波を与えることで得られることが確認された. 【2.長距離におけるボイド波の成長過程】 当研究室が保有している10mの水平矩形チャネルに6mのレールを搭載させて,単一の気泡群を追跡しながら観察することで,流れと共にボイド波が発達していく過程を調べた.波形の先端で微小気泡同士の合体が活発になり,移流速度が増加することで,ボイド波が成長していくことが確認された.
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