放電に伴い生成するプラズマを液体界面に作用させ,その化学的反応性を用いて水質浄化,医療および材料改質などを行う研究が盛んに行われているが,未だにエネルギー効率の観点から汎用的な応用化が困難な状況にある。本研究では、プラズマ水質浄化法の実用化に向けて必須である、エネルギー効率の改善を目的としている。以下に得られた結果を示す。 1.細管を用いたキャピラリー放電に、メチレンブルーを用いた分解実験を行ったところ、キャピラリー内で生じる流動により両側リザーバ内のメチレンブルー濃度に差ができることが分かった。エネルギー効率の観点からは、溶液が均等に処理されることが望ましいと考えられるため、キャピラリー放電による水質浄化ではさらなる効率化が可能であることが示唆された。 2.そこで、細管を複数有するキャピラリー放電装置を構築し、溶液の分解実験を行った。 ハイスピードカメラによる計測により、二本の細管を用いた放電の場合、両細管内で生じる放電のタイミングに相関があることが明らかになった。 3.一定時間内の放電による発光の総時間を放電発生確率とし、時間に対してプロットすることで、細管ごとの放電確率密度関数を表すことができる。二本の細管の確率密度関数の相関係数を導出することで、放電相関率を定量的に求めた。その結果、細管の長さを変化させた際に放電の相関は変化し、15-30 mmの長さの細管内では、管長が短いほど相関が大きい、つまり二本の細管で同期していることが明らかにされた。さらに、リザーバ内の液面流動を計測すると、二本の管で放電が同期する方が、流動が小さいことが分かった。この時、リザーバ内の分解対象物の濃度分布の偏りも大きいと考えられる。得られた知見により、本プラズマ水質浄化デバイスでは管長さを制御することで、放電同期性とそれに伴う流動を変化させることができ、高効率な分解が可能であることが示唆された。
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