本研究の目的は、生体潤滑機構解明のために関節軟骨内外の流れおよび関節軟骨の変形を考慮した流体と多孔質弾性体の連成解析手法の開発を行い、生体軟骨の変形と滲出が骨端間の流体潤滑及び摩擦特性に与える影響を定量的に明らかにすることである。本年度は、多孔質弾性体の支配方程式の解法として、penalty法、Lagrange未定乗数法、augmented-Lagrange法による解析を行い、計算安定性と計算負荷について比較、検討を行った。 Biot理論に基づく多孔質弾性体の支配方程式は、流体相と固体相の空隙率によって平均化された応力の平衡方程式、多孔質媒体中の圧力と浸透流束の関係式(Darcy則)、多孔質媒体の骨格の変形を考慮した流体の連続の式からなり、これらの方程式群に対して固体に対する流体の相対変位、圧力、固体の変位が独立変数となる。強連成解法のため、数値解析手法として有限要素法を採用し、penalty法、Lagrange未定乗数法、augmented-Lagrange法によって定式化された弱形式を導出した。導出された弱形式は非線形となっているため、Newton-Raphson法によって線形化を施した。 解析対象は多孔質弾性体の単軸圧縮である。変数の要素内分布は流体の相対変位と固体の変位は双線形、圧力は一定とした。離散化後の代数方程式のソルバーはGMRES法である。圧縮後の最終形状が得られるまでに必要な反復回数は、Lagrange未定乗数法に比べて、penalty数を与えたaugmented-Lagrange法の方が少なかった。penalty法はpenalty数が小さい場合には他の手法に比べ反復回数が少なかったが、penalty数を大きくすると解が求まらずに計算が破綻する結果となった。
|