研究課題/領域番号 |
17K14590
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
米本 幸弘 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (70516418)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 動的濡れ性 / 液滴 / 付着力 / 表面張力 |
研究実績の概要 |
本研究は、液体と固体の物性から液滴の動的接触角を予測できる理論式の構築を目指している。今年度は、できるだけ流体力や液体注入時のシリンジ先端の影響を排除するために、超撥水基板上に液滴を滴下した状態で、液滴上部から数種類の固体基板を接触させる形で液滴の動的濡れ挙動を観察評価した。具体的には、超撥水基板上に純水を滴下し、その液滴の上部からPC(polycarbonate)基板及びSR(Silicone rubber)基板の2種類をそれぞれ接触させた。液滴を設置した基板自体は電子天秤上に置かれた状態であるため、質量の測定も実施した。滴下した液滴体積は、10マイクロリットルから200マイクロリットルとした。簡単な予備実験の結果、固体基板を近づけた際に、静電気の影響を受けることから、除電ブラシ等を用いることで静電気の除去を行った。 実験の結果、対象とする固体基板を濡れ拡がる液滴接触線の速度は基板の濡れ性が良いほど速くなる結果となり、液滴の体積が大きいほど速度も大きくなることが明らかとなった。また、濡れ性の違いにより、上部基板に保持できる液滴体積量が異なることもわかった。保持液滴の観察から単位面積当たりの付着力を算出し、その付着力がある一定値に近づくと、液滴が保持できなくなり、液滴の分裂挙動が発生することがわかった。通常、濡れ性は単位接触線あたりの力で評価されるが、本結果は、単位面積当たりの付着力の概念の重要性を示唆するものであり、動的濡れ挙動を評価する上で興味深い結果が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予備実験の結果、固体基板を近づけた際に、静電気の影響を受けることが判明したが、同時に、基板の種類が異なると除電の方法が異なることも分かった。その除電の方法を確立するまでに時間を要したため。
|
今後の研究の推進方策 |
固体基板の表面粗さを変えた実験も実施し、粗さと接触線の挙動や液滴の保持力(付着力)の評価を実施する。また、平行平板間の液滴を押さえつける実験も実施することで、接触線が前進する際の挙動も評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
主に研究進捗がやや遅れているため、次年度使用額が生じた。次年度は固体基板の粗さを変えた実験も実施するため、その加工費等への支払いや、前年度までの成果の学会での発表や論文として発表することを計画している(OAジャーナルへの投稿に伴うAPC)。
|