研究課題/領域番号 |
17K14595
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研究機関 | 鳥羽商船高等専門学校 |
研究代表者 |
亀谷 知宏 鳥羽商船高等専門学校, その他部局等, 准教授 (70734854)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 感圧塗料 / 感温塗料 / 複合センサ / 3Dプリンタ |
研究実績の概要 |
3Dプリンタで感圧・感温模型を作製するにあたり,まず感圧色素ならびに感温色素の調製を安全に行うために必要な換気設備を自作した.感圧色素は広く使用されている白金ポルフィリン(PtTFPP),感温色素は特性の良い色素の一つであるZnS-AgInS2 (ZAIS)ナノ粒子を用いることを考え,それぞれの色素に対するバインダとして,いくつかの樹脂について調査した.候補となる樹脂として,耐衝撃性のポリスチレン(HIPS)やシリコンシーラントを購入した.HIPSはこれまでに感圧塗料のバインダとして使用された実績のあるポリスチレンの強度特性を向上させたものであり,シリコンシーラントは酸素透過性の高いシリコンの一種として候補にした.これらの樹脂を感圧色素と混合し,圧力特性や温度特性を調査することでバインダとしての特性を調査した.その結果,いずれの樹脂も感圧色素のバインダとしてあまり良い特性が得られなかった.現状,本研究で用いるバインダとして,特性の良い樹脂が見つけられていないため,今年度も引き続き調査していく必要がある. バインダの調査と併行して,ペースト状の樹脂を出力する3Dプリンタ装置の確立を行ってきた.市販の3Dプリンタとペースト押出装置を購入し,電気配線を適切に配線しなおすことでペースト状樹脂を出力できる3Dプリンタ装置に改造した.またペースト状樹脂を目的の量で出力するために調整するパラメータについて,本来のフィラメントを送るパラメータがペースト状樹脂の出力にどのように影響するのかを調査し,ペースト状樹脂の出力量を調整できるようにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
感圧色素および感温色素の調製,ならびにそれらを有機溶剤で溶解する際に必要な換気設備の製作を行った.市販のドラフトチャンバーは予算を考えると購入が難しかったため,家庭用の換気扇とダクト,コンパネ材,ビニールシートを用いて自作した.これにより,揮発した有機溶剤を室外に排出できるようになり,より安全に実験を進めることが可能となった. 続いて感圧色素,感温色素としてそれぞれPtTFPP,ZAISナノ粒子を用いることとし,それぞれに対して特性の良いバインダについて調査した.感圧塗料のバインダとして使用された実績のあるポリスチレンの強度特性を向上させた耐衝撃性のポリスチレンを購入し,特性を調査したがよい特性が得られなかった.また,さらに酸素透過性の高いシリコンについて,コーキング用に市販されているシリコンシーラントを購入し,バインダとしての特性を調査した.圧力変化に対して発光強度が変化することは確認したが,圧力を変化させてから発光強度が一定値に落ち着くまでに非常に時間を要した.現状,本研究で用いるバインダとして,特性の良い樹脂が見つけられていないため,引き続き調査していく必要がある. バインダ樹脂の調査と並行して,市販の3Dプリンタとペースト押出装置からペースト状の樹脂を出力する3Dプリンタ装置の確立を行った.電気配線を改造し,動作確認を行った.ペースト状樹脂を出力する際に調整するパラメータと,通常の3Dプリンタとして設定するパラメータとの関係を調査し,ペースト状樹脂を目的の量で出力する設定の仕方を確認した. 以上のように,研究の進度はペースト状の樹脂を出力する装置の構築は予定より早く進んでいるが,試行錯誤を要するバインダの選定について予定より遅れており,挽回する必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度,感圧模型,感温模型の樹脂として適切なものが調査しきれなかったため,今年度も引き続き調査していく.またペースト状樹脂を出力する3Dプリンタ装置について,出力量とパラメータの関係は調査したが,ペースト状樹脂の粘度と押出速度やステージの温度など,適切な出力条件の関係を調査するまでには至っていない.樹脂を決定しないとペースト状樹脂の特性は不明であるため,詳細な出力条件の決定はできないが,最適値のある程度の目星をつけるため,樹脂の調査と併行して,濃度を調整することで粘度を変化させ,ペースト状樹脂を出力して知見を蓄積しておく. 感圧模型,感温模型の樹脂として適切な樹脂が見つかれば,それらの樹脂を用いて感圧模型の作製に取り掛かる.選定した樹脂をペースト状にし,3Dプリンタ装置での出力に適切な出力条件の詳細を決定する.ここで樹脂の選定と併行して進めている樹脂の粘度などと出力条件の関係から,ある程度目星をつけた条件からはじめ,詳細を詰めていく.条件が決まったら,実際に感圧模型をそれぞれ作製し,圧力特性,温度特性,経時特性を調査する.感温模型についても同様に行う. 感圧模型,感温模型の特性を調査できたら,その後感圧・感温模型の作製ならびに特性の調査に移る予定(次年度)であるが,その際,まず作製した感圧・感温樹脂が,感圧色素と感温色素の相互干渉が生じていないか確認する必要がある.感圧色素と感温色素との相互干渉については発光スペクトルから調査するが,そのために必要なスペクトル取得装置の構築を今年度中に行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に行う予定である,感圧・感温樹脂の発光スペクトルの調査に向けて,白色光源を購入する予定であったが,見積りの段階で商品の納入が平成30年4月に入ってしまうかもしれないとのことだったため発注を控えた.そのため,平成29年度予算の一部を平成30年度に使用することとなった.もともと平成30年度に行う予定の実験に向けて余裕をもって準備を行うという計画であったため,この次年度使用にすることが当初の計画の進捗に影響を与えることはない.
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