研究課題/領域番号 |
17K14595
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研究機関 | 鳥羽商船高等専門学校 |
研究代表者 |
亀谷 知宏 鳥羽商船高等専門学校, その他部局等, 准教授 (70734854)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 感圧塗料 / 感温塗料 / 複合センサ / 3Dプリンタ |
研究実績の概要 |
3Dプリンタ装置で,感圧色素および感温色素を含んだ機能性模型(感圧・感温模型)を作製するにあたり,3Dプリンタ装置を確立,ペースト状樹脂の出力量を調整できるようにし,2018年度からペースト状樹脂にシリコンシーラントを用いて単純形状模型の形成を試みてきた.模型を形成する際,シリコンシーラントがステージに吸着しないなどの課題が生じたが,2019年度は出力ノズルとステージとの距離やステージの材質を変更することで,シリコンシーラントによって円筒形状の模型の形成に成功した.ただし,直方体や円柱形状などの中央部分まで詰まっている形状は表面が粗くなってしまったため,そのような形状やより複雑な形状の模型を作製する際には,場所に応じて吐出速度を変更したり,そのほかのパラメーターを調整するなどの工夫が今後必要になると考えられる. 実際に感圧色素として白金ポルフィリン(PtTFPP)を用いて,PtTFPPのトルエン溶液とシリコンシーラントを混合した樹脂を3Dプリンタ装置で吐出することで,円筒形状の感圧模型の作製を試みた.その結果,作製した模型はシリコンシーラントのみで作製した模型と比較して,表面がより滑らかに形成できた.作製した感圧模型について圧力感度と温度感度を調査した結果,2018年度に調査した3Dプリンタ装置を用いずに作製したPtTFPPとシリコンシーラントの感圧サンプルと同程度の特性を示すことが分かった.一方で,シリコンシーラントにPtTFPPのトルエン溶液を混合することによって,作製される模型の表面状態が改善されたことから,今後より精度の高い模型を作製する際には感圧樹脂の最適な混合割合について調査する必要があると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
色素を混合せずにシリコンシーラントのみを3Dプリンタ装置で出力し,模型の形成を試みてきた.出力ノズルの先端とステージとの距離が離れすぎていたことから模型の形成ができない問題があったが,出力ノズルを固定する治具の改良を行った結果,吐出されたシリコンシーラントもステージに吸着し,模型の形成が可能となった. 模型を形成するにあたって,当初直方体の単純な模型の作製をする計画をしていたが,直方体や円柱のような中央部分まで詰まっている形状の場合,中央部分に樹脂を埋める際に直前に吐出したシリコンシーラントの乾燥具合などの影響を受け,表面が粗くなってしまう問題が生じた.シリコンシーラントの吐出速度やノズルの走査速度を調整するなど改善を試みたが解決には至らなかった. ひとまず作製する模型を中央部分が空洞の円筒形状に変更することで模型の作製に成功した.さらにシリコンシーラントにPtTFPPのトルエン溶液を混合し,3Dプリンタ装置で感圧模型のサンプルを作製した.作製したサンプルの静的特性について調査した結果,3Dプリンタを用いずに作製したサンプルと同程度の静的特性を得ることができた. 以上のように,シリコンシーラントで模型を作製するにあたって,ステージに吸着しない問題や,模型の形状によって表面が粗くなってしまう問題が生じたため,その解決,改善に時間を要し当初の計画より遅れてしまった.一方で,PtTFPPを含んだ円筒形状の機能性模型の作製には成功し,その静的特性から本研究の手法に一定の可能性を見出せたと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は,感圧色素にPtTFPP,バインダーにシリコンシーラントを用いた感圧模型を3Dプリンタで作製し,その静的特性について調査した.その結果,同じ色素,バインダーで従来の方法により作製した感圧サンプルと同程度の特性が得られたため,単一色素による機能性模型の3Dプリンタでの作製に関して可能性を示すことができた. 一方で,感圧塗料は温度依存性をもつことから,一般的に感温色素などから得られる温度情報を用いて温度補正することで,その計測精度の向上がはかられているが,現時点で3Dプリンタ装置による形成では,作製した模型の表面粗さなど,精度が問題となり,当初予定していた感圧色素と感温色素を塗り分けた多種色素による機能性模型の形成は難しいと考えている. そこで2020年度は,感温色素であるZAISナノ粒子のみをシリコンシーラントに混合することで感温模型を作製する.さらに併行して,単一色素でも温度補正を要しない温度非依存PSPに用いられる色素であるピレンスルホン酸(PySO3H)を用いて感圧模型の作製を行う.なおPySO3Hを用いた感圧模型の特性調査ができるように,2019年度に光源や光学フィルタなど計測装置を購入したが,PySO3Hはその濃度や励起光強度によって容易に特性が変わるため,作製した模型や実験条件に合わせて,適切な光学フィルタなどを追加で購入する必要があると考えている. これら単一色素による感温模型や温度感度を有しない感圧模型を作製し次第,それらの静的特性を調査し,その可能性を探る計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
シリコンシーラントを用いて感圧性や感温性を有する機能性模型を作製する予定であったが,3Dプリンタによる吐出条件の決定に想定以上の時間を要した.感圧模型の作製はできたが,感温模型や感圧・感温模型の作製までには至らなかった.2020年度は単一色素による機能性模型として,感温模型の作製や,温度非依存PSP色素を用いた機能性模型の作製を試みる.未使用額は模型作製費用や評価装置の購入などに充てる.
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