3Dプリンタ装置で,感圧色素および感温色素を含んだ機能性模型(感圧・感温模型)の作製を試みてきたが,多色素の塗り分けは現状の3Dプリンタでは表面精度などの観点から困難と判断し,色素を1種類での機能性模型の作製に注力してきた.感圧色素である白金ポルフィリン(PtTFPP)や,感温色素であるユーロピウム錯体(EuTTA)やZnS-AgInS2 (ZAIS)ナノ粒子をシリコンシーラントに混合した樹脂を,3Dプリンタ装置で吐出することで単純形状模型を作製し,その静的特性を調査した.その結果,いずれも3Dプリンタ装置を用いずに作製したサンプルと同程度の特性を示すことから,本研究の手法に一定の可能性を見出せている. 2021年度はEuTTAやZAISナノ粒子を用いた感温模型について,その特性の調査をさらに進めた.EuTTAの感温模型については,シリコンシーラントに混合する色素濃度を変化させることで静的特性に及ぼす影響を調査した.その結果,圧力感度は色素濃度に大きな影響を受けないことや,温度感度は濃度により影響を受けることがわかった.ZAISナノ粒子の感温模型については,前年度調査した感温模型はZAISナノ粒子が劣化していたため,新たにZAISナノ粒子を作製し感温模型を作製しその特性を調査した.新たな色素を用いて感温模型を作製した結果,静的特性において改善が見られた.EuTTAを用いた感温模型とZAISナノ粒子を用いた感温模型の特性を比較すると,EuTTAに比べてZAISナノ粒子の方が圧力感度が低く温度感度が高いという,感温模型として望ましい特性を有することがわかった.
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