研究課題/領域番号 |
17K14596
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研究機関 | 都城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
藤川 俊秀 都城工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (10777668)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高速超純水用小型キャビテーションタンネル / 液体の張力 / キャビテーション流れのCFD解析 / 気泡力学 / 初生理論 / 核生成 |
研究実績の概要 |
キャビテーションは液体中で微細な気泡核が生成,成長,崩壊する複合現象で,流体機械や油圧機器等に性能低下を引き起こし,損傷や騒音を発生させる.気泡核がある条件下で際限なく成長する現象をキャビテーション初生という.気泡核が生成して初生に至るミクロな物理過程は未解明である.本年度は張力下の水中で初生の物理過程の研究を可能とするキャビテーションタンネルを製作し,気泡力学に基づく単一球形気泡核の初生理論に関する研究を行い,以下の成果を得た. 1)非循環型高速小型キャビテーションタンネルの製作:前年度に検討したキャビテーションタンネルの計画および設計概念に基づき,今年度はキャビテーションタンネル本体,初生のミクロな物理過程の観察を可能とする可視化部,その上下流側に設置する三種類のフランジの製作を行った.装置本体は今年3月に都城工業高等専門学校・流体工学実験室に設置完了し,現在,性能試験を実施中である. 2)有限時間持続する張力下とその後の大気圧下でのキャビテーション初生の予測法:液体の張力下での単一球形気泡核の成長に及ぼす①張力の強さ,②張力の持続時間,③非凝縮性気体の初期圧力,④蒸気圧,⑤液体の粘性,⑥表面張力の影響を気泡力学の基礎方程式であるRayleigh-Plesset方程式により解析し,水および油類中での初生条件を3つのパラメータで予測する簡易な方法を提示した.本方法により初生に及ぼす粘性の影響が理論的に予測可能となった. 3)大振幅振動圧力場で非平衡蒸発・凝縮を伴う水蒸気泡の膨張・収縮の気泡力学解析:静止水に強力超音波を照射して水蒸気泡を発生させた場合における単一球形気泡の膨張・収縮に及ぼす非平衡蒸発・凝縮の影響を気泡力学に分子気体力学に基づく気体論境界条件を組み込んで明らかにした. 以上述べたように,本年度は実験装置を完成させ,理論解析に関しては所期の計画を滞りなく実現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画以上に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
高速で流れる水の中に置かれた物体表面での流れのはく離と張力発生,はく離点近傍での気泡核の生成・成長・離脱,その後の成長をともなう気泡の並進運動,すなわち「キャビテーション気泡生成の素過程」は未解明である.この素過程を研究するためには,流速だけでなく,水温,空気含有度,浮遊気泡を制御でき,はく離と張力発生の因果関係,はく離点近傍での流速・圧力を正確に制御できる実験装置でなければならない.本研究では,これらの必要条件を満す非循環型キャビテーションタンネルを用いて,CFD・気泡力学の支援により,キャビテーション気泡生成の素過程を解明する. (1) 実験:キャビテーションタンネル内の二次元流路の中で,流れと直角に置かれた円柱と流路壁の隙間(のど部)を,水が50m/s 程度の流速で通過する状況で気泡生成の実験を行う.試料水には,浮遊気泡と不純物を取り除き,空気含有度を調節した水道水あるいは蒸留水を使用する.のど部下流の円柱表面で局所的に発生する張力(-1.4MPa程度)による気泡核生成・成長・離脱,並進運動を顕微鏡付き高速度カメラにより観測し,キャビテーション気泡生成の素過程を調べる. (2) 理論:キャビテーションタンネル内高速水中での気泡生成実験に対応する理論解析を行う.水中における単一球形気泡の気泡壁面での非平衡蒸発・凝縮および熱伝導を気泡力学に組み込む.非平衡蒸発・凝縮は,水蒸気―水系の気液界面を対象とするため多原子型ES-BGK Boltzmann方程式から導かれた気液境界条件を用いる.この境界条件中の蒸発係数および凝縮係数は分子動力学シミュレーションおよび衝撃波管により分子レベルで決定した値を採用する.このことにより,多原子分子としての水蒸気の非平衡蒸発・凝縮の気泡成長に及ぼす影響を正確に解析することができる.
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