本研究は,「キャビテーション気泡生成の素過程」を実験流体力学(EFD),計算流体力学(CFD)及び気泡力学の融合により解明することを目的としてなされたものである.高速度で流れる水中に置かれた円柱表面近傍での流れのはく離,はく離点近傍での張力発生と気泡核生成,気泡の成長・離脱,その後の気泡の並進運動をともなう成長過程を研究対象とした.実験では,本科研費補助金により都城高専に設置された非循環型キャビテーションタンネルの性能試験結果及びこれに基づいて得られた実験条件について検討した.理論では,非循環型キャビテーションタンネル内の流れ場を計算流体力学(CFD)により解析する手法を完成させ,さらに張力下の静止液体中での初生条件を明らかにした. 【実験結果】 本装置の性能試験を行い,キャビテーション初生研究の実験条件を特定し,キャビテーションの様相は,レイノルズ数とキャビテーション数により,①初生キャビテーション領域(キャビテーションが発生し始めた段階),②サブ・キャビテーション領域,③スーパーキャビテーション領域の3つのパターンに分類でき,液体中に含まれる固形物や浮遊気泡の大きさが気泡の生成に影響を及ぼしていることを明らかにした.この結果から,今後,発生位置を特定し,そこでの流れの速度・圧力をCFDで解明,気泡の成長・並進運動の詳細を観測と理論で解明するための条件が特定された. 【理論】 張力下での気泡核成長に及ぼす①張力の強さ,②張力の持続時間,③非凝縮性気体の初期圧力,④蒸気圧,⑤液体の粘性,⑥表面張力の影響をRayleigh-Plesset方程式により解析し,液体水素,液体窒素,水,グリセリン及びオリーブオイル中での初生条件を3つのパラメータで表した.本解析結果は上記実験で張力下でのキャビテーション初生の物理を理解する上で重要な役割を果たすものである.
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