研究課題/領域番号 |
17K14599
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
岡部 孝裕 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (70772713)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 熱物性計測 / 逆問題解析 / メラノーマ / 有効熱伝導率 / 腫瘍深達度 / 生体伝熱 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,非侵襲熱物性計測による皮膚科医の熟練を要さないメラノーマの定量的早期診断及び腫瘍深達度推定手法の確立を最終目的とし,具体的な目標として「皮膚伝熱特性の解明」,「逆問題解析手法の確立」,「動物実験への展開」を設定した.本年度は,特に①解析モデル構築,②数値計算による熱物性計測時の皮膚伝熱特性の解明,③逆問題解析手法の開発を実施した. ①腫瘍深達度及びメラノーマの熱伝導率・血流特性を推定可能な逆問題解析に必要な解析モデルを作成した.本モデルは,表皮,真皮,腫瘍を有する多層構造であり,支配方程式にPennesの生体伝熱方程式を採用することで血流や代謝の影響を考慮した.血流の変化はPennesの式中の血液かん流の値を変化させることで再現した. ②構築したモデルを用いて,様々な条件下における保護熱源式プローブを用いた非侵襲熱伝導率測定時の皮膚伝熱特性の検証を行った.特に,表皮厚さや,腫瘍の熱物性・血流,腫瘍深達度,加熱時の熱浸透深さに着目し,体の各部位や個体差,異なる加熱条件など幅広い条件下での温度応答や有効熱伝導率に与える影響を検証した.結果より,腫瘍深達度によって有効熱伝導率の値が変化することが示唆され,熱物性計測による深達度推定の実現可能性が示唆された. ③構築した解析モデルと得られた知見をもとに,逆問題解析手法の構築を行った.本手法では,パルス加熱時のプローブの温度応答と有効熱伝導率の実験値と解析モデルから得た計算値から計算した目的関数を最小化することによって各パラメータの値を推定する.現在,構築した手法の妥当性検証を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,非侵襲熱物性計測による皮膚科医の熟練を要さないメラノーマの定量的早期診断及び腫瘍深達度推定手法の確立を最終目的とし,本年度の目標を①解析モデル構築,②数値計算による熱物性計測時の皮膚伝熱特性の解明,③逆問題解析手法の開発と設定していた.上記の通り,解析モデルの構築,熱物性計測時の皮膚伝熱特性の検証,逆問題解析手法の構築を実施し,おおむね目標を達成した.
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今後の研究の推進方策 |
今後の目標として,①生体等価ファントムを用いた逆問題解析手法の妥当性検証,②非臨床実験による熱物性計測時の皮膚伝熱特性の解明,③自然発生型メラノーマ担癌マウスを用いた動物実験への展開を予定している. 開発した逆問題解析手法の妥当性を実験的に検証するために,多層生体等価ファントムを用いた非臨床実験を行う.模擬腫瘍の深達度を変化させた場合の有効熱伝導率測定を行い,本解析手法の深達度推定精度を検証する.また,数値計算によって予測された熱物性計測時の皮膚伝熱特性を実験的に検証するために,模擬腫瘍の形状や熱物性,深達度を変化させた場合や加熱方法の違い,皮膚構造の違いなどを模擬し,熱物性計測を行う.本手法を自然発症型メラノーマ担癌マウスを用いた動物実験に展開し,有用性の検証を行う.
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