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2017 年度 実施状況報告書

量子・分子論的解析に基づいた膜構造制御による高プロトン伝導性電解質膜の開発

研究課題

研究課題/領域番号 17K14600
研究機関東北大学

研究代表者

馬渕 拓哉  東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (10795610)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワード高分子電解質膜
研究実績の概要

本研究の目的は,粗視化MDシミュレータを用いて電解質膜内における水チャンネル形状特性および高次ナノ構造形成メカニズムを解明することである.この目的は具体的に以下の3つのサブテーマに集約される.(1)粗視化MD法による高次ナノ構造内プロトン輸送評価シミュレータの構築,(2)プロトン伝導特性を支配する水チャンネル形状特性の解明,(3)ブロック共重合体を用いた高次ナノ構造形成メカニズムの解明.今年度は,これら3つのサブテーマのうち,主に(1)の内容を実施した.具体的には,これまでのMD法による量子・分子論的解析に基づいたナノスケール物質輸送特性の知見をボトムアップ的に取り入れた粗視化モデルを用い,より大規模(数百nm)の高次ナノ構造内におけるプロトン輸送特性を解析できる粗視化MDシミュレータを構築した.本シミュレータによって得られた水チャンネル構造特性は静的構造因子として空間相関を特徴づけるパラメータとして定量化し,共同研究先の散乱実験の計算モデルに対応する試料を用いた測定結果と直接比較することで,計算モデルの妥当性を検証することができた.今後は,本モデルを用いて,構築されたシミュレータを用いて,水チャンネルの構造と材料・環境パラメータの関係を解析し,水チャンネルの連結性に影響を与える因子の特定を行っていく.さらには,これら水チャンネル形状と分子構造との関係性から,高プロトン伝導性水チャンネル形状を形成するための分子構造の支配要因を特定し,その高次ナノ構造形成メカニズムを解明する予定である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は,反応分子動力学法を用いた計算結果を利用してボトムアップ的に粗視化モデルを構築した.従来手法では計算負荷が大きく,実験結果と比較し得るサイズの計算は困難である.よって,本課題では粗視化分子動力学シミュレーションを用いてより大規模(数十nm程度)の電解質膜内部の水チャンネル構造を解析できるシミュレータを構築した.本計算では,アイオノマーの水に対する親和性の度合いが重要であると考えられるため,アイオノマー粒子の水和自由エネルギーの水溶液を基準とする相対値が実験値を再現するように相互作用パラメータの調整を行った.本シミュレータを用いてNafion膜内における水チャンネル構造特性について解析を行った結果,水とNafionが相分離を起こし3次元に水チャンネル構造を形成していることが分かった.これらの水チャンネル構造に関して本シミュレータにより得られた電解質膜内水チャンネルの構造特性を静的構造因子として評価することで,共同研究先にて実施した散乱実験の結果と比較を行った.いずれの含水率においても特徴的な周期構造を有する水チャンネル構造のピーク(アイオノマーピーク)が示され,実験結果 とも良く一致していることが確認できた.さらに,含水率増加に伴い,ピーク位置が大きい構造側へシフトする傾向も実験結果と良く一致しており,従来の粗視化モデルと比較しても大きく改善し,ナフィオン膜内における水チャンネル構造を定量的に再現できていることが確認できた.

今後の研究の推進方策

最終的な目標である電解質膜の理論設計指針の提案に向けて,まずはどのような水チャンネル形状が高プロトン伝導性を発現することが可能か設計の方向性を見極める必要がある.また,水チャンネルの形状を特徴づける構造パラメータとプロトン伝導特性との相関を把握することが形状特性の解明には重要である.そこで本研究では,これまでの研究で独自に開発したホッピングを考慮したプロトン輸送シミュレータを用いて,実験的に提唱されている代表的な水チャンネル構造を電解質膜構造に拘束条件を付加することで意図的に形成させ,その中でのプロトン伝導特性を評価する.また、今年度構築した構築したシミュレータを用いて,異なる分子量やブロック比を有した様々な分子構造ポリマーのシミュレーションを実施し,安定したシリンダーやラメラ形状の水チャンネルを形成できる構造条件を明らかにする.また,系の状態(温度,圧力,含水率)の変化に対する水チャンネル形状特性の解析を行うことで,水チャンネル形状の安定性を評価し,これらの状態変化がプロトン伝導特性に与える影響を解析する.これらの知見を基に高プロトン伝導性を有する理想的な水チャンネル形状を安定的に示すジブロック共重合体の分子構造を決定する.

次年度使用額が生じた理由

精算時における端数として次年度使用額が生じた.少額のため次年度分は当初計画通り使用する.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Dependence of electroosmosis on polymer structure in proton exchange membranes2017

    • 著者名/発表者名
      MABUCHI Takuya、TOKUMASU Takashi
    • 雑誌名

      Mechanical Engineering Journal

      巻: 4 ページ: 17-00054

    • DOI

      10.1299/mej.17-00054

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Molecular Analysis of Structural Effect of Ionomer on Oxygen Permeation Properties in PEFC2017

    • 著者名/発表者名
      Kurihara Yuya、Mabuchi Takuya、Tokumasu Takashi
    • 雑誌名

      Journal of The Electrochemical Society

      巻: 164 ページ: F628~F637

    • DOI

      10.1149/2.1301706jes

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Molecular Dynamics Study of Ionomer Dispersions in Water/Alcohol Mixtures2017

    • 著者名/発表者名
      T. Mabuchi and T. Tokumasu
    • 学会等名
      The Ninth JSME-KSME Thermal and Fluids Engineering Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] Molecular Analysis of Oxygen Permeation Properties in Ionomer on Pt Surface in PEMFC2017

    • 著者名/発表者名
      Y. Kurihara, T. Mabuchi, and T. Tokumasu
    • 学会等名
      6th European PEFC & Electrolyser Forum
    • 国際学会
  • [学会発表] 水・NPA混合溶液中におけるアイオノマー分散構造に関する分子論的解析2017

    • 著者名/発表者名
      馬渕拓哉,徳増崇
    • 学会等名
      日本機械学会2017年度年次大会

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公開日: 2018-12-17  

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