研究課題/領域番号 |
17K14601
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井ノ上 泰輝 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00748949)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / ナノ材料 / 電子デバイス |
研究実績の概要 |
単層カーボンナノチューブ(CNT)の半導体デバイス応用に向けて、以下の2点を中心に研究を行った。 アルコール化学気相成長法により水晶基板上に水平配向単層CNTを合成し、シリコン基板に転写した後にフォトリソグラフィと真空蒸着により電極を形成して、電界効果トランジスタを作製した。長尺除去手法を用いて金属性単層CNT取り除いた。処理後の単層CNTに対して、電子線リソグラフィによりチャネル長数百nm程度の微細電極を配置し、複数の電界効果トランジスタを作製した。全てのトランジスタが10の4乗以上の高いオンオフ比を示し、半導体性単層CNTのみから成る配向構造の作製に成功したことが確認された。この結果は、半導体性単層CNT配向構造を用いた複数トランジスタの一括作製に初めて成功したことを意味し、今後の単層CNTトランジスタの大規模作製の可能性を示すものである。 また、単層CNTを用いたトランジスタにおいて、単層CNTと直接接触するゲート絶縁膜の選定は重要である。単層CNTと同様の6員環構造からなる絶縁体である六方晶窒化ホウ素(hBN)原子層はその候補の一つである。銅箔を基板とし、アンモニアボラン粉末を原料として、化学気相成長法によりhBNの合成を行った。ラマン分光法および吸光分光法による分析を行い、hBNが合成されたことを確認した.得られたhBNをシリコン基板に転写し、さらに水平配向単層CNTをその上に転写することで、単層CNTとhBNの複合構造の作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属性単層CNT除去後の長尺の半導体性単層CNT配向構造から複数の電界効果トランジスタの作製を実証することが、本研究課題における最重要な要素の一つであった。本年度にこれを達成したことから、本課題が順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
より高性能な単層CNTトランジスタの作製に向けては、水平配向単層CNTの更なる高密度化および長尺化が必要となる。そのためには単層CNTの合成機構の詳細を解明することが求められる。今後は、新たな成長過程分析手法を導入し、水平配向単層CNTの成長の時間変化を分析する。また、単層CNTとhBNの複合化の新手法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の条件出しが予想より円滑に進行したため、使用額が若干少なくなった。次年度はより挑戦的な内容に取り組むことから,消耗品費のために繰り越すこととした。
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