研究課題/領域番号 |
17K14604
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
安田 啓太 琉球大学, 工学部, 助教 (60760163)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | クラスレートハイドレート / 海水淡水化 / 二酸化炭素ハイドレート / 相平衡条件 / 結晶観察 |
研究実績の概要 |
本研究ではクラスレートハイドレート法による海水淡水化技術の確立に向け、熱物性・ハイドレート生成の動特性を把握するための実験的研究を行っている。 熱物性として、ハイドレートの生成/分解が起こる臨界条件である相平衡条件を測定している。平成29年度は二酸化炭素をゲスト物質として、気体二酸化炭素+二酸化炭素ハイドレート+塩化ナトリウム水溶液の3相平衡条件を測定した。塩化ナトリウム水溶液は海水を模擬したものである。交付申請書の「研究計画・方法」では、平成29年度中に塩化ナトリウム水溶液3.5 mass%の系で測定を行い、平成30年度に塩化ナトリウム水溶液7.0 mass%、10.5 mass%の系で測定を行うとしていたが、測定が順調に進んだため、平成29年度中に塩化ナトリウム3.5 mass%、7.0 mass%、10.5 mass%の系で測定を完了した。このため、平成30年度は実海水に近い組成の標準合成海水を利用して測定を行う。詳細については「今後の研究の推進方策」に記述する。 気体二酸化炭素+二酸化炭素ハイドレート+塩化ナトリウム水溶液の3相平衡条件について一通り知見が得られたため、成果を学術論文および国際会議で発表予定である。 ハイドレート生成の動特性を把握するための実験として、二酸化炭素ハイドレート+塩化ナトリウム水溶液系で生成する二酸化炭素ハイドレートの観察実験を予定している。平成29年度は圧力容器を中心として構成される実験系を構築し、二酸化炭素+純水系で二酸化炭素ハイドレート生成の予備実験を行った。おおむね交付申請書「研究計画・方法」通りに計画は進んでいるが、従来の研究と比較するため、平成30年度も引き続き二酸化炭素+純水系での二酸化炭素ハイドレート生成実験を行い、その上で二酸化炭素ハイドレート+塩化ナトリウム水溶液系で生成する二酸化炭素ハイドレートの観察実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では大別して相平衡条件を測定する実験研究と二酸化炭素ハイドレート生成の観察実験研究の2種を並行して行っている。以下ではそれぞれの進捗状況と当初の計画との対応について述べる。 相平衡条件測定は、当初平成29年度・30年度を通じて、気体二酸化炭素+二酸化炭素ハイドレート+塩化ナトリウム水溶液(塩化ナトリウム濃度: 3.5 mass%、7.0 mass%、10.5 mass%)の3相平衡条件測定を行い、平成29年度はこのうち塩化ナトリウム濃度が3.5 mass%の系で測定を行う予定であった。平成29年度に行った実験は想定よりも順調に進み、年度中に塩化ナトリウム濃度3.5 mass%、7.0 mass%、10.5 mass%の系で測定を完了した。そのため、相平衡条件測定については「当初の計画以上に進展している」と判断される。 二酸化炭素ハイドレート生成の観察実験については、平成29年度中に実験装置を製作し、予備実験として二酸化炭素+純水系での二酸化炭素ハイドレート生成実験を行う予定であった。平成30年度にはこれを受けて二酸化炭素+塩化ナトリウム系で二酸化炭素ハイドレート生成実験を行うのが当初の計画である。これに対し、現在までに実験装置の製作を終え、予備実験の一部を完了している。そのため「おおむね順調に進展している」といえるが、一部の予備実験を平成30年度に残していて、平成30年度初頭は当初の計画に比べて若干ながら遅れた状況から研究を進める予定である。 上記のように、相平衡条件測定では「当初の計画以上に進展している」一方、観察実験では「おおむね順調に進展している」ものの平成30年度初頭は若干の研究の遅れが懸念される。総合的に「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
ここでも並行している2種の実験研究、相平衡条件測定およびに二酸化炭素ハイドレート生成の観察実験についてそれぞれ記述する。 「研究実績の概要」「現在までの進捗状況の理由」で述べてきたように、相平衡条件測定は当初の計画以上に測定が順調に進み、平成29年度・30年度を通じて行う予定の3種類の濃度の塩化ナトリウム水溶液を用いた相平衡条件測定を終えている。このため、平成30年度は得られた成果を学術論文としてまとめ、国際会議で発表するとともに、塩化ナトリウム以外の海水成分を実海水に近い割合で配合した標準合成海水を用いて相平衡条件測定を行う。配合した塩分濃度が塩化ナトリウム水溶液系と同じ3.5 mass%、7.0 mass%、10.5 mass%になるよう調整し、塩化ナトリウム水溶液系と比較するとともに、より実際の海水淡水化が行われる条件に近い条件での相平衡条件を把握することを目的とする。 二酸化炭素ハイドレート生成の観察実験研究について、平成30年度は二酸化炭素+純水系での結晶観察実験からはじめる。すでに報告のある系で実験を行い、本研究での実験方法を確立するためである。その後、二酸化炭素+塩化ナトリウム水溶液系で観察実験を行う。パラメーターとしては系の圧力、塩化ナトリウム濃度の他、相平衡温度と実験温度の差であるサブクール度を想定している。上記のようにすでに塩化ナトリウム水溶液系での相平衡条件測定を完了しているため、ここで得られた情報を利用して条件設定を行う。 いずれの実験についても平成30年度初頭から始めることができるよう実験系の準備がなされている。効率よく研究を遂行しクラスレートハイドレート法による海水淡水化手法の開発に向けた特性把握を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度交付の直接経費200万円のうち、およそ20万円を次年度使用額とした。この主たる要因は交付申請書で30万円の支出を予定していた旅費を使用しなかったことである。本研究に係る学会発表として、平成30年度に発表を予定している国際学会が学会のテーマとの適合性を鑑みて適切であると考え、平成29年度は学会発表を行わず、その分平成30年度の旅費に充てることとした。一方で、相平衡条件測定が順調に進んだこともあり、物品費は交付申請書に記載した170万円よりも多い180万円を支出した。 平成30年度は国際学会での発表に伴う旅費の支出が70万円程度想定される。また、2種の実験研究を並行して進めるため物品費としての支出が80万円程度見込まれる。以上のようにして、20万円の次年度使用額と平成30年度交付の直接経費130万円をあわせて使用する予定である。
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