クラスレートハイドレート(ハイドレート)は水とゲスト物質からなる氷状の固体化合物で、その内部に海水中の塩分成分を取り込まないため、海水とゲスト物質とを反応させて残る海水と分離後に分解してゲスト物質と分離することで淡水が得られる。本研究課題では、ハイドレートを用いた海水淡水化手法の開発を目的として、その有力なゲスト物質とされる二酸化炭素を利用し、ハイドレートの生成・分解条件にあたる相平衡条件の測定と、ハイドレート生成過程の動特性を明らかにするための結晶成長観察実験を行った。 最終年度は、相平衡条件の測定として、実海水に近い組成の標準合成海水を用いて、気体二酸化炭素+二酸化炭素ハイドレート+標準合成海水の3相平衡条件を測定した。その際、3.5 mass%から10.5 mass%まで3種の塩分濃度の条件で実験を行った。また、結晶成長観察実験として、二酸化炭素+純水系で前年度に続き実験を行い、さらに二酸化炭素+塩化ナトリウム水溶液系で実験を進めた。いずれの系でも所定の温度・圧力条件で、気液界面に生成するハイドレートの様子を観察した。 研究期間全体を通じた成果は以下の通りである。相平衡条件について、気体二酸化炭素+二酸化炭素ハイドレート+塩化ナトリウム水溶液/標準合成海水の3相平衡条件を塩分濃度3.5 mass%から10.5 mass%の条件で測定した。得られた相平衡条件は塩化ナトリウム系では温度271.85 Kから279.05 K、圧力1.283 MPaから3.617 MPaの範囲、標準合成海水系では温度271.15 Kから279.05 K、圧力1.298 MPaから3.361 MPaの範囲であった。さらに、結晶成長観察実験から、平衡温度と実験温度の差を同等にした場合に、塩化ナトリウム水溶液を用いた系では純水を用いた系よりも結晶成長速度が遅くなることが分かった。
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