本研究では、医療分野で求められる光熱癌治療の高精度化を目指し、ふく射のナノスケール効果を応用したナノマイクロ散乱性媒体による光学物性制御について、基礎理論を確立し、生体組織への正確なふく射加熱技術の確立を目指す。 平成29年度は、散乱性媒体の形状及び配列が周囲の局所プラズモンに与える影響について、有限要素法によるシミュレーション解析を行った。粒子形状の与える影響について、ナノキューブ、ナノロッド、ナノワイヤやナノクリスタル等の形状を設定し、光の散乱方向が形状により、大きく変化することが明らかした。また、プラズモンの様相が形状によって変化することから、複雑形状による局所プラズモン増大の可能性が示唆された。粒子配列の与える影響について、ナノワイヤの繊維間距離により、局所プラズモンの強度や増強場が大きく変化することが明らかになった。それにより、発熱体となるナノワイヤ自体の抵抗損失による発熱分布が変化し、正確な熱制御における繊維間距離の重要性を示した。 また、散乱性媒体の分散制御のため、ヘルムホルツコイルを用いた磁場制御を行い、磁性ナノワイヤについて、磁場による配列制御に成功した。作製した散乱性媒体の光学物性を評価するため、散乱位相関数を測定するための光学系を構築し、散乱性媒体の光の散乱方向について、実験的評価を行った。ナノワイヤの材料により、散乱方向が大きく変化することが明らかになった。 今後はシミュレーション解析と実験結果を比較し、妥当性を検証するとともに両手法の改善のためのフィードバックを行っていく。
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