期間全体としての目標である「群れを知る」ことを実現するため,R1年度は,そのための要素として掲げた「群れを作る・見る」「群れを遣う」を前年度から継続して取り組んだ.それぞれの詳細は以下の通りである. (1)スワームロボットシステムの創発的協調行動の生成のために,人工進化を用いてロボットの制御器を設計する進化ロボティクスアプローチを採用した.ロボットの入出力,およびシナプス結合荷重値をバイナリ化したときの群れ行動について調べた.前年度までのフィードフォワード型の人工神経回路網ではなく,リカレント型のものを用いてロボット群の頑健性・柔軟性・拡張性の評価を行なった.実施した計算機実験では,フィードフォワード型のときと同様に,ロボット台数の増加に対してバイナリ化した信号を用いることでより高い適応度を得られた. (2)群れとしてのパフォーマンス向上のため,ロボットの群れ行動に人間が介入するヒューマンスワームインタラクションに取り組んだ.具体的には,遠隔操縦型のリーダロボットによりロボティックスワームを目的地までまとまりを維持したまま移動させるというタスクを取り扱った.ロボティックスワームにはBoidに基づく群れ行動モデルを実装した.また,学習機構を持ち,先導,追従,その中間的なルールのいずれかを逐次用いる過程でそれらの選択確率を更新する.障害物の形状などが異なる環境で評価実験を実施した. 研究機関全体を通して,スワームロボットシステムの群れ行動解析を通した協調行動に潜むメカニズムの解明,およびその知見を基とした高い適応的タスク遂行能力を持つ群知能システムの構築法への展開を目指した.災害現場での探索活動などの将来的な工学的・社会的応用への礎を築くための一助となるべく,不確実な環境における群れ行動生成・解析,および群れの高機能化のためのヒューマンスワームインタラクションに取り組んだ.
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