研究課題/領域番号 |
17K14632
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
加古川 篤 立命館大学, 理工学部, 助教 (50755486)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 直列弾性アクチュエータ / インフラ点検 / 多関節ロボット / 狭隘環境 |
研究実績の概要 |
2017年4月から9月までカナダ・ウォータールー大学に滞在し,現地の教員や学生との議論を通して小型差動弾性アクチュエータの構想設計を行った.帰国後,2017年9月から2018年3月までの間に,実機を製作し実験によりその性能検証を行った. 設計においては,特に差動弾性アクチュエータの弾性体の材料や断面形状に着目し,その力学特性の検証に取り組んだ.弾性体には従来一般的であったシリコンゴムだけでなく最新の3次元プリンターの柔軟材料を用い,円柱や1次円錐,2次円錐などの形状によるトルク特性の変化をモデル化によって調査した.材料力学の基礎に基づき,せん断弾性係数やせん断ひずみなどから弾性体の回転変位と発生トルクの関係を定式化し,この結果と差動機構の力学的な関係から最終的に差動弾性アクチュエータが発生させられるトルクの値を導いた. 上記の差動弾性アクチュエータの実機を製作し,実験によってその基本原理および性能を検証した.実験から差動機構を用いることにより,角度センサーひとつで弾性体の回転変位を測ることにより発生トルクを推定できることを示した.また,弾性体のヒステリシスは残るもののトルクの実験値が事前に求めた理論値と概ね一致し,線形特性を持つだけでなく,2次円錐の断面形状を持った弾性体は1次円錐のものより大きなトルクを発生させられることも明らかにした. 最後に,本研究で開発した差動弾性アクチュエータを配管内検査ロボットに搭載し,配管内での突っ張り動作と走行動作を検証した.現段階では,ラピッドプロトタイピングを実行すべく,材料などに3次元プリンターの樹脂を使用しているため,耐久性不足により大きな突っ張り力を発生させることはできなかったが,ロボットが配管内の壁面に車輪を押し付けて前進後退できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた差動弾性アクチュエータの力学特性の検証がおおむね順調に進展しており,弾性体の断面形状による発生トルクの値やその変化量を既に定式化できている.しかし実機実験から,歯車などの構成部品の耐久性不足や既成品のサーボモーターを用いることによるトルク不足などが明らかになったため,これらに改善の余地がある. また,計画していたトルクリミッタの機能については,弾性体とロボットの筐体を圧入ピンで固定し,大きなトルクが加わると弾性体が変形してピンを乗越えるように設計した.しかし,トルクリミッタとしては機能したものの,実験によるトルクの計測値が理論値と大きく異なり,再現性がなかった.そのため,トルクの計測精度が要求されるような用途には有用でないことが明らかとなった. 丁字管の走行時の力学モデリングについては現在も推進中である.
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今後の研究の推進方策 |
上記の進捗状況で述べた耐久性不足と発生トルク不足について,既成品のサーボモーターを用いるのではなく,モーターと差動弾性機構を一体化した独自のアクチュエータを製作することによりカスタマイズ性を高め,改良を図る.また同時に弾性体に新たな材料(シリコンゴムや3次元プリンター用の柔軟材料だけでなくウレタンゴムなどを含めた多種の高分子材料)を用いることで弾性体の剛性そのものを高めて性能を検証する. 以上のように改善を施した後,曲管や丁字管における配管内移動ロボットの手動操作による実験を行い,トルクの変化を計測する.これらの計測値から曲管や丁字管で滑らずに走行できる関節の制御戦略を力学的な視点に基づきながら構築し,実機に応用したときの走行性能を検証する.
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