本研究で試作した差動弾性アクチュエータ1号機の基礎実験の結果を論文にまとめ,2018年10月にスペイン・マドリードで開催された国際会議2018 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems (IROS 2018)にて研究発表を行った. しかし,1号機に用いた弾性体は3次元プリンタの材料であったり,ホビー用に用いるシリコン材料であったりしたため,耐久性が低く,繰り返し運動に対して破断が発生した.また,差動弾性アクチュエータの駆動用として用いた市販のサーボモータは,モータ,減速機,駆動回路などの全ての部品が1つの箱型の筐体に収まるよう上手く設計されてはいるものの,ロボットの形状や大きさに合わせてカスタマイズすることが困難であり,結果的に大型化を招くだけでなく,移動ロボットに用いるにはトルク不足であった. そこで2018年度では,弾性体に工業用のポリウレタン材料を用いて耐久性を向上させた.また,モータ,減速機,駆動回路などの部品を分離して配置するよう再設計し,1号機の3倍以上のトルクを実現した.これにより,2017年度では不十分であった配管内走行ロボットの性能検証実験が可能となった.実験では関節の角度制御とトルク制御を両方可能にするオムニホイールを備えたロボットシステムを構築した.トルク検知用の角度センサにモジュールの小さな歯車を用いることで分解能の向上を図った.以上の改良により,T字管走行はまだ不完全であるが,トルクを常に制御した状態であればあらゆる姿勢で曲管や垂直管に対応できるだけでなく異形管にも素早く対応できることが明らかとなった.
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