研究課題/領域番号 |
17K14634
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
大瀬戸 篤司 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (10775703)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ドローン / マニピュレータ / 制御理論 / 飛行制御 / 最適化 / 産業用ロボット / Unmanned Aerial Vehicle |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、位置と姿勢を任意に制御可能な無人航空機とロボットハンドの組み合わせにより、無人機全体をマニピュレータ化し、作業範囲に制限がない空中マニピュレータを実現することである。空中マニピュレータの実現には、空気力を考慮した冗長多リンク系無人機の高精度制御理論、作業動作を空中マニピュレータの手先軌道へ変換するアルゴリズムが必要となる。平成30年度はそれらを実現するために以下の課題に取り組んだ。 申請者はこれまでに、空中マニピュレータのハードウェアの開発と、空中マニピュレータが任意の姿勢で飛行する時に、消費エネルギを最小化するような推力、チルト角を決定する飛行エネルギ最小化理論を構築した。この理論を実証するため、開発したハードウェアに制御理論を組込み、実証試験を行った。安全に試験を行うため、機体軸周りの運動を一軸、または二軸に固定するための回転試験装置を開発した。試験の結果、構築したモデルと実際の挙動に差異があることが分かったため、モデルを修正し、シミュレーションを通して制御理論を改善した。次にモーションキャプチャシステムを用いた屋内飛行試験を実施したが、制御パラメータの調整に時間が掛かっており、安定した飛行に成功していない。 空中マニピュレータで地上マニピュレータと同様の作業を実施するためには、作業動作を空中マニピュレータの手先軌道に変換することが必要であるため、作業変換アルゴリズムの開発を行った。まずベルトコンベア間の荷物移動のような、比較的ゆっくりとした動作を対象にして、シミュレータ内で地上マニピュレータの動作模擬を行った。次に地上マニピュレータの手先軌道を空中マニピュレータの飛行計画に変換するアルゴリズムを開発し、シミュレータ内で空中マニピュレータにより作業動作を模擬することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度は作業変換アルゴリズムの開発とシミュレータによる検証は順調に進行した。しかし飛行試験による検証において遅れが発生し、当初予定していた制御理論と作業変換アルゴリズム実機を用いた評価試験が行えなかったため、全体としては、やや遅れ気味である。しかし、第19回公益社団法人 計測自動制御学会システムインテグレーション部門で表彰されるなど、これまでの研究成果は高い評価を受けている。 本年度は空中マニピュレータのための制御理論と作業変換アルゴリズムを実機で評価する予定であったが、飛行試験において制御パラメータの調整に時間を費やしたため、十分な飛行試験が行えていない。 また空気力学モデル構築において、風洞試験が行えず動的な空力データの取得が行えなかった。そのため無風状態での推進機のモデリングと3DCADデータを用いて機体の空力パラメータのみをモデリングしている。 作業動作変換アルゴリズムの開発は順調に行い、シミュレータによる検証は行えたが、今年度は動的な空力データを取得できなかったため、動的な空力データが不要な比較的ゆっくりとした作業動作にターゲットを絞り開発している。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、30年度に完了できなかった内容を優先的に実施する。まず飛行試験を通して空中マニピュレータの制御理論および作業動作変換アルゴリズムの実証を行い、省エネルギ性、位置決め精度を定量的に判断するとともに、空中マニピュレータが作業動作を正確に行えることを証明する。 また30年度に開発した地上マニピュレータの作業動作を空中マニピュレータの飛行計画に変換するアルゴリズムの拡張を行う。空中マニピュレータの対象とする作業の範囲を広げ、回転動作などの高速な動きを伴う作業に対応できるように拡張する。このアルゴリズムの開発には動的な空力パラメータが必要になるため、風洞試験により動的な空力データの取得を行い、これまでに構築したロボットモデルの高精度化を行う。 さらに平成29、30年度までに開発した空中マニピュレータのハードウェア、制御理論とアルゴリズムの検証・改良を随時実施し、実環境の利用に適する耐久性の高い機体と理論構築を行う。 論文投稿、学会発表は積極的に行い、これまでの成果を公表していく。
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