研究課題/領域番号 |
17K14635
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
折川 幸司 北海道大学, 情報科学研究科, 助教 (50781324)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 周波数逓倍 / マルチトランス / 高周波電源 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ISMバンドである13.56MHzの高周波電力が出力可能な小型・高効率のスイッチング高周波電源を実現することである。提案する高周波電源は,電圧形インバータの方形波電圧に含まれる低次高調波成分を利用した周波数逓倍技術を基礎しているため,半導体スイッチと磁性材料の各動作周波数は出力周波数に比べて小さくすることができる。本研究ではこの技術を用いて13.56MHz,10kWのスイッチング高周波電源を実現する。平成30年度の研究実施計画においては昨年度から引き続き2.5MHz出力をターゲットとしており,それに加えてその成果を基に並行して13.56MHz出力をターゲットとしている。 まず,2.5MHz出力時においては,マルチトランスの銅損が低変換効率の主な原因であることから,数種類の材料および直径を有する巻線の交流抵抗を実測した。そして,選定した巻線を周波数逓倍回路の試作機に使用し,負荷試験による温度測定により銅損低減効果を実証した。次に,昨年の2.5MHz出力でのマルチトランスの寄生容量の検討を13.56MHz出力に拡張したところ,13.56MHz出力においては各相のマルチトランスの寄生容量の大きさを管理することがより重要であることを実験的に明らかにした。そのため,3Dプリンターで製作した巻線ガイドとともにコアに巻線を巻くことで各相のトランスにおいて寄生容量を含むパラメータの均一化して管理できることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マルチトランスの銅損低減のためにリッツ線の適用を試みたが,2.5MHzでの低減効果が見込みより小さく,巻線選定やマルチトランスの試作に時間を要し,進捗がやや遅れている。また,13.56MHz出力においてはまず各相のトランスの寄生容量を均一化することが周波数逓倍回路にとって重要であることが判明した。したがって当初の研究計画とは異なり,寄生容量を含むトランスパラメータを管理可能な巻線ガイドを用いるトランス構造の検討という新たなスケジュールが追加されたため,進捗がやや遅れている。しかしながら,平成30年度後半からは基礎的な実験データは得られている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の平成31年度の計画では,13.56MHz出力周波数逓倍回路に整合回路も合わせて検討するスケジュールを予定していた。前年度において,トランスパラメータを管理可能な巻線ガイドを3Dプリンターで自由に設計および製作できることを実証できたため,寄生容量を含む周波数逓倍回路のパラメータを整合回路の設計に反映させる。ただし,まずは2.5MHz出力および13.56MHzに対応した高効率なマルチトランスを完成させ,負荷変動に対応する整合回路の動作範囲の設定や許容損失などの仕様設計へフィードバックする。また,マルチトランスの一次側巻線抵抗および漏れインダクタンスの大きさによっては出力周波数成分がトランス鉄損に影響を与えるため,その影響度を定量的に明らかにし,周波数逓倍回路が高効率な高周波電源を実現できる裏付けを実証する予定である。
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