本研究の目的はISMバンドである13.56MHzの高周波電力が出力可能な小型・高効率のスイッチング高周波電源を実現することである。提案する高周波電源は,従来の高周波出力電源の絶縁トランスやインピーダンス整合回路に適用が困難とされていた高透磁率・高飽和磁束密度の磁性材料が適用可能であり,磁性材料の動作周波数の限界を超える周波数を出力可能である。これまでの実績および課題を以下に示す。 (1)トランス二次側の寄生容量を低減する巻線構造の開発(平成29年度) (2)トランス一次巻線・二次巻線間結合容量を管理する巻線ガイドの開発(平成30年度) (3)2.5MHz出力の連続運転の実証試験およびひずみの少ない13.56MHz出力の実証試験(平成31年度) 最終年度である平成31年度には,まず5相インバータによる2.5MHz出力において90分以上の連続負荷試験を行い,マルチコアトランスにおいて出力周波数成分に起因する鉄損による発熱はほとんど発生しないことを実機検証した。また,その裏付けとして,5相の周波数逓倍回路を単相の高次共振回路に置き換えて行った簡易的な鉄損測定の実験により,一次側漏れインダクタンスおよび巻線抵抗を低減することで出力周波数成分がマルチコアトランスの鉄損に与える影響を低減できることを実証した。次に,平成30年度後半に開発した巻線ガイドの構造は変えずにガイドの寸法を調整するだけで一次巻線・二次巻線間の結合容量を一定に保ちつつ,漏れインダクタンスのみを変化させることができることを解析と実験により確認した。一方で,磁性材料の窓面積および巻線ガイドの大きさによって使用可能な巻線の大きさが制限されることを明らかにした。今後は,当初の予定であった13.56MHzのkW出力を実現する高出力に対応したトランス構造の検討を行う。
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