研究課題/領域番号 |
17K14638
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
春名 順之介 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40609369)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マトリックスコンバータ / 2出力インバータ / マルチポート電力変換器 / DCマイクログリッド |
研究実績の概要 |
本年度は,マトリックスコンバータと2出力インバータを組み合わせたマルチポート電力変換器を提案し,その制御法について成果報告を行った。 2出力インバータは従来のインバータと比較すると,1レグにつき3つのスイッチを使用して2つの出力を得る電力変換器であり,一方,マトリックスコンバータは,交流電力から直接交流電力に変換する電力変換器である。本研究ではこれら2つを組み合わせる際の制約条件,特に,マトリックスコンバータ側の制御の複雑さを簡単化することに着目し,マトリックスコンバータを単純なHブリッジインバータのオンオフ制御にして,交流交流変換の制御を2出力インバータ側のみで行う手法を提案した。 この手法は,2出力インバータを単相インバータ2台分の電圧指令に2出力インバータ特有の制御手法である直流オフセット重畳を行い,2出力インバータの動作を破綻しないようにし,次に,マトリックスコンバータのスイッチング動作が2出力側インバータのスイッチング周波数の1/2で上下アームを交互にオンオフする動作としていることと,提案回路に高周波トランスを使用することから,2出力インバータとマトリックスコンバータの間で動作の協調ができるよう,マトリックスコンバータのスイッチング信号に合わせてインバータの出力波形が必ず正負交互に出力できるようにスイッチング信号を調整する。 以上の提案手法により,本年度の目標であった,回路の基本動作の確認(2出力インバータにおける2つの独立したVVVF出力の可能性,高周波トランスに直流オフセットが重畳しないこと,マトリックスコンバータの動作の簡単化)をシミュレーションにより確認した。シミュレーションの結果,上記すべての動作が確認できた。一方,スイッチング信号の生成に関しては,従来のインバータやマトリックスコンバータと比較してスイッチング回数が多いことが問題であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究実績の概要に書いたとおり,主に制御方式の提案と,提案回路の動作の妥当性を検証した。制御方式の提案に関しては,2出力インバータ,高周波トランスの特性を利用し,かつ,マトリックスコンバータの制御を簡単にすることができたため,制御の簡単化に関しては概ね目標を達成できたと言える。 次に,回路の特性検証について,基本動作の確認として挙げた,1.2出力インバータにおける2つの独立したVVVF出力の可能性,2.高周波トランスに直流オフセットが重畳しないこと,3.マトリックスコンバータの動作の簡単化 の3点について,シミュレーションによって検討した。まず,1に関しては,オープンループ制御によって,高周波トランスとマトリックスコンバータを介して2つの独立したVVVF動作が得られることを確認した。次に,高周波トランスに直流オフセットが重畳しないことであるが,これに関しては,2出力インバータの指令値が直流オフセットを持っていることから,トランスの動作に悪影響を及ぼす可能性があったため検証したが,提案回路は単相インバータ構成にしていることから線間電圧でオフセットがキャンセルされるため,理論的に直流オフセットの影響が出ないことを確認できた。最後に上げたマトリックスコンバータの制御の簡単化であるが,これに関しては現状問題はないが,トランスの詳細なパラメータを入れたり系統連系などを行った際には回路と制御に工夫が必要になる可能性はまだ残っているものの,現状では問題なく動作していることがわかった。 以上の理由から,本年度の計画としては概ね順調に進展していると評価したものである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,これまでシミュレーションによって確認した動作を検証するため,2出力インバータ,高周波トランス,マトリックスコンバータ,および,周辺回路(電圧,電流検出回路,制御回路)の製作を行う。回路の設計に関しては,これまでのシミュレーション結果に基づいて行う。また,実験と同時に,シミュレーションの方もより詳細なモデルを作って解析と実験による検証を同時に行っていく予定である。 一方,これまでの研究によって,制御方式に関して,従来のインバータと比較してスイッチング回数が多いということがわかっている。特に2出力インバータでは中間スイッチのスイッチング回数が多くなる方式が知られており,これに対して,従来の三相2出力インバータでは空間ベクトル変調を用いてスイッチング回数を低減する手法が知られている。しかし,単相インバータでは空間ベクトル変調の摘要が困難であるため,空間ベクトル変調の考え方を基に,スイッチング前後の状態を監視してスイッチング回数が増えない制御を開発してスイッチング損失を低減を図る。 加えて,提案回路のさらなるスイッチ数低減法についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の実施計画として,シミュレーション結果を基に高周波トランスの設計をおこない,発注を行うことで次年度の実験機製作を早めて円滑な実験を行う予定であったが,高周波トランスの設計と発注までには至らなかったため,次年度使用額が生じている。高周波トランスは提案回路の重要な部品であるため,早急に発注を行う予定である。合わせて,次年度の予算は実験装置を正確しなければならないため,次年度は上記予算と合わせて購入する必要がある。また,次年度には実験製作以外にも成果発表も行う予定であるため,学会参加費,および,旅費を請求している。さらに,2出力インバータの入出力電力を測定して損失を測定する必要があることから,パワーメータについても用意する必要がある。以上の物品や測定装置の購入,学会参加費,旅費を計上して研究を行う。
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