太陽光発電や風力発電を含む離島マイクログリッドでは、需給バランスを適切に維持することで周波数変動を抑制することが重要な課題である。本研究課題では、需給変動を高速に検出するための外乱オブザーバの技術を蓄電池制御に応用し、複数の制御デバイス間で互いの制御行動を推定しながら機能する分散制御型外乱オブザーバの制御手法を提案した。 平成30年度の検討では、同様の制御手法を風力発電の慣性応答制御に応答することで、蓄電池が無い場合にも、短時間のうちに生じた急峻な需給変動を高速に補償する制御技術の開発を目指した。風力発電は発電機やブレードに運動エネルギーを蓄えているため、風車の回転数を変化させながら運動エネルギーの増減分を出力変動として系統に注入あるいは吸収することで、周波数変動の抑制効果が期待されるが、一方で風車の回転数が過度に変化する可能性も危惧される。 そこで本研究では、風車の回転数制御と外乱オブザーバによる周波数制御とを組み合わせることにより、電力系統への貢献と適正な回転数の維持が可能であるか検討を進めた。初年度から整備したMATLAB/Simulinkを用いた離島マイクログリッドのモデルに加え、提案する制御方式や出力変動の回転数特性を有した風車モデルを追加し、外乱オブザーバに与えるべき制御ゲインと、その制御効果との関係について検討を深めた。以上の検討を通じて、風力発電が系統容量の20%程度となる離島マイクログリッドにおいて、大きな風力発電出力の変動が生じた場合にも適切に周波数を維持できることが示された。
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