平成30年度では前年度の課題分析をさらに進め、(1)電力が不要の際に受電共振器で発生する損失の低減、(2)送電と受電のタイミングが独立で連動していないことによる効率悪化の解消、(3)受電回路のバイアス電流のさらなる低減、(4)給電コイルの小型化と高効率化について注力することにした。課題(1)と(2)については、受電側の制御を、前年度のコンスタントオンタイム制御から、受電出力電圧が目標値を超えたら一定時間受電を止め、その後復帰するようなコンスタントオフタイムという制御に変更した。こうすることで必ず送電側から見て受電回路が電力を必要とする状況を把握可能になり、受電共振器内で電流が回生して損失する時間も減る。また、必要な送電電力量が大きい時は13.56MHz、中程度の時は4.52MHz、低い時は6.78MHzと送電周波数を切り替える新サブハーモニック方式を提案することで送電を完全に止めずとも送電電力量が調整可能になり、送電と受電のタイミングも連携できるようになった。課題(3)については受電回路の同期やレギュレーションに必要な制御回路のバイアス電流をさらに削減するように比較器やアンプのバイアスを不要とする構成に変更した。課題(4)については適切なコイル径と配線幅を、電磁界シミュレーションを用いて設計し、面積あたりのQ値を2~3倍向上させた。これらの改善を施したところ、シミュレーションにおいて2.4V出力30mA負荷時に送電側から受電側までの最大電力伝送効率は57.5%であった。これを基に集積回路設計試作を実施したが、実測において評価基板の寄生容量により予期しない共振が発生したために実証は現時点でできていないが、体内埋め込み医療デバイスのような発熱が厳しく制限され、消費電力が少ない軽負荷デバイスへの非接触給電において50%の効率を得る見込みを得ることができた。
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