研究課題/領域番号 |
17K14644
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
関崎 真也 広島大学, 工学研究科, 助教 (70724897)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 再生可能エネルギー / 太陽光発電システム / 電力品質 / 配電系統 / 最適化 / 社会受容性 / 経済合理性 |
研究実績の概要 |
平成29年度は研究計画に沿って以下の研究を実施した.
(1) 非協力ゲームのモデル構築と定式化 需要家リソースを用いた配電系統運用システムの基礎理論構築を目的として,需要家を利己的なプレイヤーとした非協力ゲームのモデル構築を実施した.まず,需要家リソース制御量に応じて需要家が金銭的な利得を獲得するシステムをモデル化した.このモデルに対し,需要家が自身の利得を最大化するように需要家リソース制御量を利己的に決定する非協力ゲームを定式化した.需要家の利己的な行動に対し,配電系統運用を効率化するための最適なインセンティブを求めるために,需要家リソースに対するインセンティブがシステム運用者によって動的に最適化されるStackelbergゲームをモデル化し,2レベル数理計画問題として定式化した.
(2) 協力ゲームのモデル構築と定式化 配電系統運用システムに対し需要家が協力するインセンティブを付与するため,再生可能エネルギーの発電量に依存して需要家が獲得する金銭的な利得をモデル化し,需要家リソース制御に要するコストを考慮した上で特性関数として定式化を行った.配電線電圧に依存する発電機会損失に対し,需要家リソースを用いて金銭的な利得の向上量を協力ゲームにおける譲渡可能効用とすることで,任意の提携における特性関数は最適化問題の解として得られる.また,配電線電圧制約式を,感度係数を用いて線形で記述し,線形計画問題として定式化することで,協力ゲームの解を求めるための計算時間短縮を図った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成29年度においては,実施計画にて挙げていた(1)非協力ゲームのモデル構築と定式化,および(2)協力ゲームのモデル構築と定式化の両計画を完了しており,加えてゲームの解を効率的に求めるためのアルゴリズムに関する知見も得られているため,次年度の研究計画についても順調に着手できると考える.
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度は下記の項目に関して研究を推進していく.
(1) 非協力ゲームの解の導出とその分析 平成29年度にて定式化した数理モデルから導かれた非協力ゲームの解に基づいた数値計算を実施する.想定する非協力ゲームにはプレイヤーが多数存在するため,多人数の需要家リソースの最適な制御量を効率的に求めるために,商用ソルバを用いた解法を開発する.その後,配電系統運用者をプレイヤーとして含めた非協力ゲームを考え,非協力ゲームの解をパレート最適な解と一致させるためのインセンティブを反映させたシステムを設計する.設計したシステムに対し,配電系統モデルを用いた数値計算を実施し,有効性を検証する. (2) 協力ゲームの解の導出とその分析 定式化した協力ゲームに対し,需要家の協力により得られた利得に基づき計算した配分の集合から公平性の観点から適切な配分を選定する手法を開発する.求めた配分に対して分析を行い,社会受容性を考慮したシステムを構築する.協力ゲームにおける多人数プレイヤーに対しコアを計算するための計算負荷が大きいため,実用時間内に配分を計算するための提携形成アルゴリズムを開発する.その後,協力ゲームの解に基づき,社会受容性を持つ配電系統管理システムの運用形態の有効性を,配電系統モデルを用いた数値計算により検証する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本年度で得られた研究成果は着実にまとまりつつあり,一部の研究成果は既に学会論文誌に投稿し,掲載されている.その他の研究成果についても成果をまとめており,学会論文誌への投稿や,学会発表などの対外発表の機会を増やすために,論文投稿費や国内外への旅費として,次年度使用額を確保させていただいた. (使用計画) 本年度で構築したモデルと定式化したゲームモデルの解に基づいて得られた知見を国内外の学会で発表するとともに,情報収集,意見交換を実施し,研究を効率的に推進していく.そのため,研究費の一部は出張旅費に使用する計画である.その他の用途としては,得られた成果を学会論文誌に投稿するための投稿費用や,海外論文誌への投稿に際しての英文校正費に使用する.
|