最終年度においては,平成30年度において設計した協調的電圧管理システムが太陽光発電出力に起因する配電線電圧変動量の上限値を与えることを利用し,配電線電圧が適正範囲から逸脱しないための制約を与えた上で,配電設備コストが最小となるように,配電設備が参照する電圧制御パラメータの最適化を実施した.パラメータ最適化にあたっては,電圧管理に必要な負担が配電設備に偏ることで設備コストが増大することを回避するために,太陽光発電システムの系統連系用PCS (power conditioning system)や可制御負荷を含む需要家リソース容量の最適化についても同時に実施した.この需要家リソース容量の最適化問題は混合整数二次錐計画問題として定式化しており,商用ソルバによる効率的な求解を可能にしている. また,配電系統運用者が持つ配電系統運用・計画に対する選好を考慮するために,設備劣化指標とコストとの間のパレートフロントを提示するシステムを構築した.得られたシステムの有効性を配電系統モデルを用いた数値シミュレーションにより検証し,需要家群の安定な協力の下で配電設備コストが低減する可能性が示された.
上記を含む研究期間全体を通じて実施した研究により,電力品質制御の一部に需要家リソースを用いた電力供給システムを構築することに成功した.設計したシステムの下では,配電系統に連系された利己的な需要家群が,電力品質維持を目的とした協力へのインセンティブを有し,かつ,配電系統運用者側が持つ選好を反映することにより,協力しないケースよりも経済的に配電系統を運用できる可能性が示された.これにより,再生可能エネルギーが大量導入された配電系統において,コストを低減しつつ電力品質の適正範囲内への維持が容易になることが期待できるため,我が国が積極的に推し進めているエネルギー政策の実現に貢献できる.
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