研究課題/領域番号 |
17K14645
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
魏 秀欽 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (80632009)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | RF電源 / 超高周波化 / 大電力 / 高効率化 / 高調波注入 / プッシュプル構造 / 数理モデル / 最適化 |
研究実績の概要 |
RF電源は高周波・大電力のAC電圧を出力する電源であり、半導体製造、太陽電池製造、MEMS製造、無線電力伝送、プラズマ清浄などの装置に組み込まれる電源である。特に近年、環境問題に対応する技術開発が注目される中、RF電源の技術を使って製造される太陽電池や電気自動車(EV)の市場は、急劇に拡大しており、それと同時にRF電源への技術的な要求が高まっている。そこで、本年度では、高周波、大電力出力のRF電源を開発した。
本年度は6.78 MHzと13.56 MHzのRF電源の開発を行った。平成29年度で構築した理論を用い、回路を設計することができた。設計から得られた素子値を用い、回路実験を行った。その結果、設計されたRF電源の周波数の超高周波化と電力変換効率の向上を同時に達成することを示すことができた。また、高周波大電流のため、共振回路における磁性素子では交流損とコア損が顕在化し、効率の劣化を招く。この二つの損失はトレードオフの関係にあるため、磁性素子設計の中でも、最適化問題が生じる。そのため、コア材、ワイヤの巻き方などを研究協力者により提案された磁性素子設計技術を導入することによりこの問題を改善した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は高周波、大電力出力のRF電源の開発が主要課題であった。平成29年度では、報告者のもつ高調波定常解析技術とコア技術に据え、それを応用展開する形で超高周波スイッチングの数理モデルを構築した。このモデルを適用して、パラメータチューニングを不要とした高精度高効率設計技術を確立し、超高周波高効率スイッチング電源の基礎理論を確立した。本年度では、その理論を用い、高周波、大電力出力のRF電源の設計を行った。スイッチ素子へのストレスに注意しながら、電力変換効率とコストの最適化をはかり、素子の選定を行った。その上で、設計に基づき回路を実装し実験を行い、電力変換効率などの基礎データを測定した。ここでは、スイッチング損失を最小化する条件が達成できるかに注意し、波形を測定した。
高周波・大電力が設計仕様の特徴であるため、本システムではプッシュプル構造を有したRF電源を開発することも目指した。しかしながら、プッシュプル構造を導入することにより、導入前後の回路構成が異なり、これまで構築した理論はそのまま適用しても上手に記述できないため、超高周波スイッチング理論の再構築が必要となった。また、その拘束条件が複雑になり、理論の構築および回路設計が困難であるという問題があり、開発は進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
高周波・大電力が設計仕様の特徴であるためにプッシュプル構造を導入したRF電源の開発も重要な課題となる。しかしながら、プッシュプル構造を導入することにより、導入前後の回路構成が異なり、拘束条件も複雑になり、これまで構築した理論はそのまま適用しても上手に記述できないことが明らかになった。したがって、今後はこれまで確立した解析技術をさらに発展させ、超高周波化のための基礎理論を再構築する。また、解析の妥当性の確認を行うため、回路実験を優先して研究を進めていく。
平成31年度では、プッシュプル構造を導入したRF電源の開発という課題とともに、RF電源より高スペックのコンバータの開発も目指している。RF電源と比較して、周波数・電力とも大きくなるため、実装のための様々な工夫が必要となる。例えば、従来の半導体素子の性能を優れる高周波向けのGaN HEMTやSiCといったワイドギャップ半導体素子を積極的に適用する。平成29年度の結果を用い、GaN HEMTやSiC半導体素子と開発するスイッチング技術を組み合わせることにより、革新的な高効率化・小型化を達成できる可能性がある。
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