本研究課題では、配電系統への太陽光発電の大量導入によって生じる電圧逸脱問題を解決するため、短時間先の電圧変動推定に基づくモデル予測型の電圧管理手法を開発することを目的としている。平成30年度は、(1) 短時間先の電圧変動推定に基づくモデル予測型電圧制御手法の開発、および、(2) 実用化に向けた開発手法の定量的評価、の二つの項目に取り組んだ。 項目(1)では、前年度に開発した電圧変動解析アルゴリズムを活用し、センサ計測地点の短時間先の電圧変動を推定し、配電系統での電圧逸脱リスクを最小化するように電圧制御機器のタップ制御を行うモデル予測型電圧制御手法を開発した。開発手法では過去に蓄積された電圧制御機器の2次側電圧とセンサ計測電圧との電圧偏差に着目し、短時間における電圧偏差の変化量を確率密度関数にて近似することで短時間先のセンサ計測地点電圧を推定し、推定電圧に基づいてタップ制御を行う。そのため、センサ計測器のリアルタイム情報を活用する集中型電圧管理手法とは異なり、センサ計測周期による制御遅れの発生や通信インフラ整備などの実用化に向けた課題の解決に期待できる。 項目(2)では、数千軒の需要家が接続した実配電系統モデルに開発手法を実装し、開発手法の電圧制御性能を定量的に評価した。対象とした配電系統モデルでは配電線ごとの電圧分布に大きな差があり、集中型電圧制御手法を用いた場合には計測地点数に関係なく適正電圧範囲からの電圧逸脱を引き起こすが、開発手法を適用した場合には適正電圧範囲からの電圧裕度を高めることができ、電圧逸脱を防止できることを確認した。また、開発手法における電圧変動量の推定区間、タップ制御の動作時限と電圧制御性能の関係性を評価し、実システムへの適用に向けた開発手法の改良を行うとともに、その有用性を確認した。
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