本研究の目的は、水素社会の構築に必要不可欠である固体高分子形燃料電池(以下、PEFC)の内部状況の再現により不具合回避のための制御方法を確立することである。手法としては、申請者らが開発した非接触磁場計測装置によりPEFCの磁場を計測し、計測値を用いて内部状況のシミュレーションおよびPEFCシステムの制御を行う。また、本研究では制御手法の汎用化のために、空冷および水冷PEFCスタックの2種類を対象として研究を行った。今年度は主に2点の課題について取り組んだ (1:PEFCのシミュレーションモデルの改良と不具合評価) 前年度、磁場に基づくシミュレーションモデルを3次元有限要素法ソフトウェア(COMSOL Multiphysics) 上に構築した。このシミュレーションモデルの改良を行った。水冷PEFCにおいても不具合時に空冷と同様の磁場分布となる結果が得られた。 (2:PEFCの各運転条件における制御手法の確立) 前年度、磁場計測値をシミュレーションおよび制御の指標として用いるために、各条件におけるPEFC冷却口内などの磁場計測を行った。また、フラッディングとドライアウトが起きる条件において磁場測定値の変化を確認した。時系列のセル電圧、磁場計測により、両者に相関があることがわかった。また不具合により磁場計測軸の決定係数に差が生じた。これは内部状態の違いにより異なると考えられ、相互の不具合は制御方法が異なることから磁場指標のみを制御指標として利用した。電圧だけでは不具合を判別することは難しいが、非破壊磁場計測値を用いることで不具合判別を行いながら安定稼働を行うことが可能となった。
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