研究課題
2019年度は軽元素侵入型FeNiN薄膜に対して脱窒素熱処理を行うことで、一軸磁気異方性を有するL10型FeNi規則合金薄膜を作製し、構造と磁気特性の評価を行った。加えて軽元素侵入型垂直磁化CoxMn4-xN薄膜の磁気特性のCo/Mn比依存性を明らかにした。SrTiO3(STO)(001)基板上に、Fe、Ni、高周波プラズマN2の同時供給による分子線エピタキシー(MBE)法により、成膜温度を変えてa軸配向したFeNiN薄膜をエピタキシャル成長した。これらの試料に対して脱窒素熱処理を行ったところ、a軸配向したL10型FeNi薄膜の作製に成功し、最大で5.9x10^6 erg/cm^3の一軸磁気異方性エネルギー(Ku)と0.87のFe-Ni長距離規則度(S)を実現した。Sについては、これまでにL10型FeNi薄膜において報告された値を大きく上回った。また、得られたKuの大きさは膜中の2種類のバリアントの存在によって抑制されている可能が示唆され、実際のKuは更に大きいと考えられる。c軸配向したFeNiN薄膜を実現し脱窒素熱処理を行うことで、将来的には垂直磁化L10型FeNi薄膜の実現も期待される。MBE法によりSTO(001)基板上に作製した、CoxMn4-xN(0≦x≦4)薄膜の磁気特性の評価に取り組んだ。Co/Mn比により磁気異方性と飽和磁化の制御が可能で、x≦0.8では垂直磁化膜となり、x=0.8付近では飽和磁化が0に近づくことが明らかとなった。X線磁気円二色性測定による評価の結果、Co原子は逆ペロブスカイト格子の角のサイトを優先的に占有し、角のMn原子とは逆向きのスピン磁気モーメントを有することが明らかとなった。これが、x=0.8付近での磁化補償の起源であり、垂直磁化Co0.8Mn3.2N薄膜は電流駆動磁壁移動デバイス等のスピントロニクス応用に適した材料と言える。
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Physical Review B
巻: 101 ページ: 104401-1-8
10.1103/PhysRevB.101.104401
Journal of the Magnetics Society of Japan
巻: 43 ページ: 79-83
10.3379/msjmag.1907R002
https://publons.com/researcher/2297357/keita-ito/