高い電子移動度を持つグラフェンFETは、同じ層状物質で絶縁性のある六方晶窒化ホウ素(h-BN)の上に設置することにより、性能が向上することが分かっている。これは、絶縁膜とグラフェンの境界におけるキャリア散乱が抑制されるためである。しかし、h-BNを電界効果トランジスタのゲート絶縁膜として利用する場合、誘電率が低いためにゲート電圧が大きくなってしまう問題がある。そこで、本研究では同じ層状物質であり、かつ、高い比誘電率と絶縁性をもつチタンナノシートなどの材料をh-BNと積層させることで、この問題を解決することを目的にする。 高い静電容量を達成するには、チャネル材料が接触するh-BNをなるべく薄くして、高誘電材料が占める厚さの割合を大きくする必要がある。しかし、h-BNを薄くしていくと、物理的に排除できないトンネル電流に起因したリーク電流が発生し、FETの消費電力が上がってしまう問題があるので、薄いh-BNにおけるトンネル電流に関する調査を行った。トンネル電流はh-BNが接触している両面の材料のバンドアライメントにより決まるが、これまで、それらの知見は明らかなっていない。そこで、F-Nトンネル電流を測定することにより、バリアハイトを算出し、バンドアライメント明らかにした。 しかし、この手法でバリアハイトを算出するには注入されるキャリアの極性が判明している必要がある。そこで、これらを調査のために、状態密度の小さなグラフェンを電極として利用し、バックゲートでグラフェンのフェルミ準位を制御した際の、F-Nトンネル電流の挙動を調査することで、その極性を判定する手法を開発した。その結果、h-BNのF-Nトンネル電流はホール電流であることが明らかになり、これらの知見からキャリア注入側の電極材料によりトンネル電流が抑制できることが明らかになった。
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