研究課題/領域番号 |
17K14657
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
原 康祐 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (40714134)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | シリサイド半導体 / 真空蒸着 / 太陽電池 |
研究実績の概要 |
本研究は、大規模展開可能な薄膜太陽電池材料として有望なBaSi2半導体の蒸着膜の品質向上を目的とする。特に、n-BaSi2/p+-Siヘテロ接合ダイオードの電気特性評価を通して、デバイス応用の観点から、BaSi2蒸着膜の品質における課題を抽出し改善することを目指す。令和元年度は、これまでに重要性が明らかとなったBaSi2蒸着膜の組成プロファイル制御について調査するとともに、より簡便に高品質成膜が可能な新たな蒸着法の開発に取り組んだ。BaSi2蒸着膜の組成プロファイル制御については、基板温度とポストアニール時間の範囲をこれまでよりも拡げて調査を行った。その結果、高い基板温度ではBaの基板方向拡散と表面からのSiO脱離の競合で組成プロファイルが決定されることを見出した。これらの現象が適度に起こる低温では、均一な組成プロファイルとなることが分かった。ただし、n-BaSi2/p+-Si接合による整流性は確認できなかった。また、BaSi2原料を加熱して発生する蒸気の組成について熱力学理論解析を行い、組成プロファイルが決定されるメカニズムについて理論的な土台を与えた。一方、従来の真空蒸着を超える新しい蒸着法についても検討を行い、近接蒸着法という新しいBaSi2成膜法を開発した。この方法は、標準的な半導体の高速熱処理装置で高速に大面積成膜が可能であるため、産業に容易に移行可能と期待できる。また、得られた薄膜は高い結晶配向を示すとともに、組成プロファイルは均一であった。よって、将来のBaSi2薄膜の産業応用に向けて新たな成膜法として期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度の研究は、BaSi2蒸着膜のプロファイル制御について新たな重要な知見を得たものの、ダイオード特性の向上にまでは結びついていない。一方で、今後の展開が期待できるBaSi2の新たな成膜法「近接蒸着法」を開発できた。この手法は従来の真空蒸着法と同等以上の均一な組成プロファイルを持つ高配向BaSi2薄膜を高速に作製できる。これらの成果を総合的に考えて、おおむね順調と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
BaSi2の真空蒸着に関するこれまでの成果を総合し、高品質なn-BaSi2/p+-Siダイオードを作製し、結晶欠陥と整流性の関係の調査を行う。同時に、n-BaSi2/p+-Siヘテロ接合の太陽電池特性を評価し、BaSi2蒸着膜の太陽電池応用可能性を調査する。さらに、近接蒸着法で作製したBaSi2薄膜へもダイオードの整流性評価を適用し、品質向上へ活かしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果発表を予定していた応用物理学会学術講演会が、新型コロナウィルス感染症蔓延防止のために中止となったため、旅費・参加費としての使用を中止した。次年度秋季の講演会で成果発表を行い、そのための旅費・参加費として使用する計画である。
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