InAs/GaAs量子ドット超格子では、InAs量子ドット積層数とGaAs中間層の厚さに応じて電子的な結合状態が変化するため、積層構造によって光応答特性の制御が可能となる。本研究では1次元状態密度を有するInAs/GaAs量子ドット超格子太陽電池におけるホットキャリアダイナミクスを解明し、ホットキャリアを利用した高効率な電流取出しを実現することを目的とした。平成30年度は、InAs/GaAs量子ドット超格子太陽電池において、ホットキャリア電流の取り出し過程に量子ドット超格子の積層周期が与える影響を明らかにした。研究期間全体を通じた研究成果は以下の通りである。 〇時間分解フォトルミネッセンスによって評価したホットキャリアダイナミクスの励起光強度依存性から、励起パルス光入射後~0.3 ns以下の時間領域において、Auger過程に起因する高いホットキャリア温度がInAs/GaAs量子ドット超格子において実現されることを明らかにした。 〇フィールドダンピング層を導入したInAs/GaAs量子ドット超格子太陽電池において、ホスト結晶であるGaAsのバンドギャップエネルギー以下の入射光を用いて電流―電圧特性を測定し、ホットキャリア電流の取り出しを実証した。 〇量子ドット超格子の積層周期を変化させたInAs/GaAs量子ドット超格子太陽電池を作製し、ホットキャリア電流の取り出し過程に、量子ドット超格子における光吸収率が与える影響を明らかにした。GaAsのバンドギャップエネルギー以下の入射光を用いた場合の開放電圧が、9層近接積層InAs/GaAs量子ドットから成る量子ドット超格子を5周期含む太陽電池では、量子ドット超格子を1周期含む太陽電池における0.75 Vから0.9 Vに向上することを実証した。
|