研究課題/領域番号 |
17K14660
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
大竹 充 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (60611415)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 硬磁性材料 / 希土類-遷移金属合金 / 薄膜 / 結晶工学 / エピタキシャル成長 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、遷移金属(T)サイトのコバルト(Co)をニッケル(Ni)で置換した合金膜を形成した。クロム(Cr)下地層上に形成したエピタキシャル膜に対して、Ni置換量を増加させると、結晶化温度を低減できることが分かった。一方で、Ni置換により、エピタキシャルRT5合金膜の磁気異方性および飽和磁化が低下した。したがって、合金膜の場合では、構造特性と磁気特性の制御範囲の双方を考慮した上で、希土類金属(R)および遷移金属(T)の組み合わせを決定する必要があることが示された。銅(Cu)下地層上に形成したエピタキシャル膜に対しては、下地層のCu原子の膜への拡散によりTサイトがCuで部分置換されているため、Niによる更なる置換によっては結晶化が顕著に促進されることはなかった。しかし、CuおよびNi置換によりRT5合金膜の磁気異方性および飽和磁化は低下した。また、これまで、酸化物の酸化マグネシウム(MgO)単結晶基板上にCrやCuといった金属下地層を形成していたが、基板材料に対する下地層材料の濡れ性が悪く、島状起伏の膜が形成され、この表面構造が磁化反転機構に影響を与えていることが分かった。そこで、MgO基板上に窒化物、炭化物の下地層を形成し、その上にCrやCu金属下地層を形成ことにより濡れ性の改善を試みた。その結果、窒化バナジウム(VN)下地層を導入することにより起伏が低減された。今後、熱処理プロセスを最適化することにより更に起伏を低減できることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TサイトのCoをNiに置換したR(Co,Ni)5膜を形成し、置換量に応じた構造特性の変化、および、磁気特性との関係を明らかにしている。そして、2から3元系に拡張した場合、構造特性と磁気特性の制御範囲の両方を考慮して、元素の組み合わせを決定する必要があることを示している。また、膜の表面起伏を低減させるために、下地の層構造の工夫を行い、効果のある下地層材料を見出している。したがって、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
T元素をFeへ拡張したRFe5合金膜の形成技術の検討を行う。R-Fe合金系の場合、バルクの熱平衡状態ではRT5相が存在しないものが多く、結晶化が容易でない場合も考えられるが、平成30年度のR-Ni-Coと同様に、3元系のR-Fe-Coを用いたり、TサイトをCuもしくはNiで部分置換することにより規則相形成の促進を図る。
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